PMFへの最短ロードマップ。「フィットジャーニー」で迷わない新規事業の進め方
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新規事業開発という、霧の中を進む航海。多くのチームが「プロダクトを作る」という目先のタスクに追われ、自分たちが今どこにいて、どこへ向かっているのかを見失いがちです。
「とりあえずMVPを作ったけど、次は何をすれば?」
「ユーザーの反応は悪くないけど、本当にこのまま進んでいいんだろうか?」
こうした不安は、航海図を持たずに航海しているのと同じ状態だからこそ生まれます。闇雲に進めば、リソースは尽き、船は座礁してしまうでしょう。
そこで今回は、新規事業という航海の全体像を可視化し、現在地と目的地を明確にするための強力な羅針盤、「フィットジャーニー(Fit Journey)」について解説します。この地図を手にすることで、あなたのチームはもう迷うことはありません。
フィットジャーニーとは?なぜ重要なの?
フィットジャーニーとは、アイデアの種がPMF(プロダクトマーケットフィット)という大きな花を咲かせるまでの、一連の検証ステップを体系化したフレームワークです。一般的に、以下の5つのフェーズで構成されます。
- CPF (Customer Problem Fit): 顧客は本当にその課題を持っているか?
- PSF (Problem Solution Fit): あなたの解決策は、その課題を解決できるか?
- SPF (Solution Product Fit): その解決策を実装したプロダクトは、価値を届けられるか?
- PMF (Product Market Fit): プロダクトは市場で熱狂的に受け入れられているか?
- GTM (Go-to-Market): どうやって市場に届け、事業をスケールさせるか?
このジャーニーを順番にたどることには、絶大なメリットがあります。
- 手戻りの削減: 課題の存在(CPF)が曖昧なままプロダクト(SPF)を作るといった、致命的な手戻りを防ぎます。下の階層が固まっていないのに、上の階層の家を建てることはできません。
- チームの目線合わせ: 「今、我々はCPFを検証している」と全員が共有することで、議論がブレず、チームのエネルギーが一点に集中します。
- リソースの最適化: 各フェーズで「問うべき最も重要な問い」が明確になるため、限られたリソースを最も効果的な検証に投下できます。
それでは、各フェーズを詳しく見ていきましょう。
Phase 1: CPF (Customer Problem Fit) - 顧客と課題のフィット
フィットジャーニーの全ての始まりであり、最も重要な土台です。
- 問うべきこと: 「その課題、本当に存在しますか?」「その課題、顧客がお金を払ってでも解決したいほど、深くて痛いものですか?」
- やること: 顧客インタビュー、アンケート調査、課題の深掘り。
- よくある罠: 「自分が欲しいから、みんなも欲しいはずだ」という思い込み。課題ではなく、いきなりソリューションから考えてしまう。
- 目指すゴール: 特定の顧客セグメントが、特定の課題に強い痛みを感じていることを証明すること。
Hint: Inovie Baseの「仮説構造化フォーム」は、このCPFフェーズで曖昧な課題仮説を「誰が・何を・なぜ」という明確な形に落とし込むのに役立ちます。
Phase 2: PSF (Problem Solution Fit) - 課題と解決策のフィット
顧客の課題を深く理解したら、次は「どう解決するか?」を考えます。
- 問うべきこと: 「我々の考えた解決策は、本当にその課題を解決できますか?」
- やること: ペーパープロトタイプ、コンセプトムービー、ランディングページ(LP)での事前登録など、プロダクトを"作らず"に価値提案を検証する。
- よくある罠: いきなり完璧なソリューションを考え、機能を作り込んでしまう。顧客は機能ではなく、課題解決にお金を払います。
- 目指すゴール: 顧客があなたの解決策のコンセプトに対し、「それなら欲しい!」「その手があったか!」と前のめりになる状態。
Phase 3: SPF (Solution Product Fit) - 解決策と製品のフィット
いよいよ、解決策を具体的なプロダクトに落とし込み、それが本当に機能するかを検証します。多くのチームが「MVP開発」と呼ぶのがこのフェーズです。
- 問うべきこと: 「その解決策を実装したプロダクト、ちゃんと使えますか?」「ユーザーはプロダクトを通して、意図した価値を体験できますか?」
- やること: MVP(Minimum Viable Product)の開発、ユーザビリティテスト、クローズドなα/βテスト。
- よくある罠: MVPが「Minimum(最小限)」ではなく、機能過多な「Maximum(最大限)」になってしまう。使いづらすぎて、本来の価値が伝わらない。
- 目指すゴール: 顧客がプロダクトを実際に使い、自力で課題を解決できることを証明すること。
Phase 4: PMF (Product Market Fit) - 製品と市場のフィット
プロダクトが機能することが証明されたら、次はそれが「市場」に受け入れられるかを検証します。ここが事業として成立するかどうかの分水嶺です。
- 問うべきこと: 「そのプロダクト、市場で熱狂的に受け入れられていますか?」「口コミで自然に広がっていますか?」
- やること: リテンション分析、NPS調査、ショーン・エリスのがっかり度調査などを通じて、顧客の「熱狂度」を測る。
- よくある罠: 「なんとなく手応えがある」という感覚だけでPMFを達成したと勘違いし、スケールに走ってしまう。
- 目指すゴール: プロダクトなしでは「とても困る」と答える顧客が40%以上存在し、リテンションカーブが平坦になること。
Hint: この複雑なPMFの計測も、Inovie Baseのダッシュボードなら重要な指標を一元管理し、客観的な判断をサポートします。
Phase 5: GTM (Go-to-Market) - 市場投入戦略
PMFを達成して初めて、事業を本格的に成長させるフェーズに入ります。
- 問うべきこと: 「どうやってこのプロダクトを市場に届け、効率的に成長させますか?」
- やること: マーケティング戦略・営業戦略の策定と実行、プライシングの最適化、組織の拡大。
- よくある罠: PMF達成前に広告宣伝費などのGTM施策に多額のリソースを投下し、資金を溶かしてしまう。
- 目指すゴール: 再現性のある成長モデル(Growth Engine)を構築し、事業をスケールさせること。
まとめ:あなたの事業は、今どのフィットフェーズにいますか?
フィットジャーニーは、新規事業という先の見えない旅における、信頼できる地図であり羅針盤です。
CPF → PSF → SPF → PMF → GTM
このステップを一つずつ、着実にクリアしていくこと。それこそが、一見遠回りのようで、実は最も失敗が少なく、成功へとたどり着く最短ルートなのです。
さあ、地図を広げて確認してみましょう。
あなたのチームは今、どのフィットフェーズにいて、次に何を検証すべきでしょうか?
Inovie Baseは、MVPの設計から検証サイクルの実行、CPFからGTMまで伴走したサポートの提供が可能です。ご興味のある方は、お気軽にお問い合わせください。