仮説検証

「この機能、欲しいですか?」は最悪の質問。顧客インタビューで絶対にやってはいけないNG行動5選

「この機能、欲しいですか?」は最悪の質問。顧客インタビューで絶対にやってはいけないNG行動5選

「すごいアイデアを思いついた!これを形にすれば、絶対ヒットするはずだ!」

新規事業やプロダクト開発の現場では、こんな熱気に満ちた瞬間が何よりのモチベーションになりますよね。そして、その熱い思いを胸に、私たちは未来のユーザーにこう問いかけます。

「今、こんな機能を作ろうと思ってるんですが…欲しいですか?」

相手はきっと、目を輝かせてこう答えてくれるはずだ。「すごい!欲しいです!できたら絶対使います!」と。…しかし、現実は非情です。その言葉を信じて時間とコストをかけて開発した機能が、誰にも使われず静かに消えていく…。

なぜ、こんな悲劇が繰り返されるのでしょうか?
答えはシンプル。「この機能、欲しいですか?」が、顧客インタビューにおける“最悪の質問”だからです。

この記事では、あなたの貴重なリソースを無駄にしないために、多くの人が無意識にやってしまっている「顧客インタビューのNG行動」を5つ厳選して解説します。一つでも当てはまったら、要注意です。

なぜ「この機能、欲しいですか?」と聞いてはいけないのか?

本題に入る前に、この質問がなぜ「最悪」なのか、その理由をしっかり理解しておきましょう。

  1. 人は嘘をつく(悪気なく): 目の前のあなたをガッカリさせたくない、良い人だと思われたいという気持ち(肯定バイアス)が働き、つい「欲しいです」と言ってしまいます。
  2. 未来は誰にも予測できない: 「もしあったら使うかも」という言葉は、「実際にお金を払って、手間をかけてまで使う」こととは全くの別物です。本人ですら、自分の未来の行動はわかりません。
  3. 一番知りたい「課題」をすっ飛ばしている: あなたが本当に知るべきは、その機能が欲しいかどうか(How/What)ではありません。その人が「どんな課題(Problem)を抱えていて、どれだけ深く悩んでいるのか(Why)」です。この質問は、最も重要な「課題の深掘り」を放棄してしまっているのです。

この質問は、占い師に「私は成功しますか?」と聞くようなもの。得られるのは、気休めか、見当違いの答えだけです。

では、具体的にどんな行動を避けるべきなのでしょうか?

顧客インタビューで絶対にやってはいけないNG行動5選

NG行動1:プロダクトのアイデアをプレゼンしてしまう

「僕たちが作ろうとしているのは、AIを活用した画期的なタスク管理ツールでして、競合のA社やB社と違ってですね…」

ついつい、自分のプロダクトの素晴らしさを熱く語っていませんか?これはインタビューではなく、ただのプレゼンテーションです。あなたが気持ちよく話している間、相手はうんうんと頷くだけの「置物」になってしまい、肝心な顧客インサイトは何も得られません。

  • なぜNGか?: 相手が話す時間が奪われ、あなたの話に「合わせよう」という心理が働いてしまうから。
  • どうすればいいか?: 「聞き役8割、話し役2割」を鉄則に。あなたの仕事は、相手の日常や仕事の話を引き出す「聞き役」に徹することです。沈黙を恐れず、相手が自分の言葉で語り始めるのをじっと待ちましょう。

NG行動2:「〇〇は不便ですよね?」と同意を求める

「今のやり方って、正直めんどくさくないですか?」
「この作業、もっと効率化したいですよね?」

これは、あなたが立てた仮説が正しいか確認したいがための「誘導尋問」です。こんな風に聞かれれば、ほとんどの人は「まあ、そうですね」と答えるしかありません。これでは、あなたの仮説を補強するだけの、自己満足な時間になってしまいます。

  • なぜNGか?: あなたの仮説を相手に押し付け、自由な回答を妨げてしまうから。
  • どうすればいいか?: オープンクエスチョン(5W1H)を使いましょう。「普段、この作業はどのような手順で行っていますか?」「その中で、特に時間がかかっているのはどこですか?」と、相手の事実や経験をありのままに語ってもらうのです。

NG行動3:「もし〜だったら、どうしますか?」と仮定の話をする

「もし、ボタン一つでこの作業が終わるツールがあったら、使いますか?」
「もし、月額500円だったら、このサービスを契約しますか?」

冒頭の「この機能、欲しいですか?」と同じく、これも未来を予測させる質問です。人は空想の世界では何とでも言えます。しかし、その答えには何の保証もありません。

  • なぜNGか?: 人は自分の未来の行動を正確に予測できず、その答えは信頼性に欠けるから。
  • どうすればいいか?: 過去の具体的な行動について質問しましょう。「最近、その作業で一番困ったのはどんな時でしたか?」「その時、お金や時間をかけてでも解決しようとしたことはありますか?」本当に深い課題であれば、人はすでに行動(他のツールを探す、誰かに相談する等)を起こしているはずです。その「行動」こそが、課題の深刻さを測るリトマス試験紙です。

NG行動4:相手の言葉を「要するに〜ですね」と解釈する

相手「このレポート作るのに、AのデータとBのデータを毎回手作業でくっつけるのが本当に大変で…」
あなた「なるほど!要するに、自動でレポートが作れる機能が欲しいということですね!」

一見、話をまとめているようで、これは危険な行為です。あなたは相手の課題を、自分の作りたい機能(ソリューション)に都合よく変換してしまっています。相手が本当に困っているのは「データをくっつける手間」なのかもしれないし、「そもそもレポートのフォーマットが悪い」ことなのかもしれません。

  • なぜNGか?: 相手の課題の本質を、自分の思い込みで捻じ曲げてしまう危険があるから。
  • どうすればいいか?: 魔法の言葉「もう少し詳しく教えていただけますか?」を使いましょう。相手の言葉を遮らず、「大変、というのは具体的にどういうことですか?」「なぜそれが大変だと感じるのですか?」と、オウム返しのように繰り返しながら、課題の解像度を上げていくのです。

NG行動5:一人でインタビューに臨む

「さあ、インタビューだ!」と一人で乗り込むのは、無謀な挑戦です。質問をしながら、相手の表情を読み取り、的確な相槌を打ち、重要な発言をメモし、次の質問を考える…。これらを一人で完璧にこなすのは至難の業です。

  • なぜNGか?: 重要なサインを見逃したり、メモが追いつかなかったり、自分の思い込みに気づけなかったりするから。
  • どうすればいいか?: 最低でも2人1組で行きましょう。「質問役」と「記録役」に役割を分担します。質問役が会話に集中している間、記録役は発言だけでなく、相手の表情や声のトーンといった非言語情報まで冷静に記録できます。客観的な視点があることで、インタビューの質は劇的に向上します。

まとめ:インタビューの目的は「答え合わせ」ではなく「発見」

顧客インタビューは、あなたの素晴らしいアイデアに「承認のハンコ」をもらうための場ではありません。それは、あなたがまだ知らない「顧客のリアルな世界」を探検し、思いもよらない「お宝(=真の課題)」を発見するための冒険です。

今日挙げた5つのNG行動は、その冒険の地図を、あなたの都合の良いように書き換えてしまう行為に他なりません。

正しい質問は、スキルです。練習すれば、誰だって上手くなります。
さあ、この記事を読んだあなたならもう大丈夫。次のインタビューでは、「この機能、欲しいですか?」という言葉をぐっとこらえ、顧客という名の広大な大地に眠る、本物の課題を探しに行きましょう。

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