AIエージェントとは?仕組みとできること、作り方と導入の進め方

AIエージェントとは、与えられた目標に向けて、AIが自分で手順を考え、検索やシステム操作などのツールを使いながら作業を進める仕組みです。質問に答えるチャットAIや、決めた手順どおりに動く業務自動化とは、次に何をするかを誰が決めるかが違います。この記事では、公的な定義と開発元の公式資料をもとに、AIエージェントの仕組み、業務でできること、2026年10月時点の主な作り方を整理します。あわせて、導入前に決める対象業務・権限・人の承認・評価・費用と、つまずきやすい点も説明します。
AIエージェントとは:目標に向けて手順を決め、ツールを使って動くAI
公的な定義と開発元の説明
総務省と経済産業省が2026年3月31日に公表した「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」は、AIエージェントを「特定の目標を達成するために、環境を感知し自律的に行動するAIシステム」と定義しています。注記では、ここでいう自律は高度な自律状態だけでなく、ある程度の自律性を持つものも含むとしています。
AIの開発元も、同じ方向の説明をしています。Anthropicは2024年12月の記事「Building effective agents」で、エージェントを、AIが自分で処理の進め方とツールの使い方を決め、作業のやり方を自分で管理するシステムと説明しています。OpenAIの開発者向けドキュメントも、エージェントはツールを使って計画を立てて作業を完了し、ほかのエージェントと連携し、手順をまたいで文脈を保てると書いています。
どちらにも共通するのは、人が1回ずつ指示を出す代わりに、AIが目標に向けて次の行動を選び続ける点です。
チャットAI・業務自動化・RPAとの違い
業務でよく比べられる3つの仕組みを、次の作業を誰が決めるかで整理すると次のようになります。
図の要点をテキストで読む
チャットAI、ワークフロー自動化やRPA、AIエージェントを比べた表。チャットAIは人が指示するたびに回答や文章を返し、次の作業は人が決めて実行する。ワークフロー自動化とRPAは、あらかじめ決めた手順どおりに処理し、結果は安定するが手順にない例外では止まるか人に戻る。AIエージェントは目標と使えるツールを渡すと、どのツールをどの順に使うかをAIが決めて作業を進め、例外にも対応しやすいが毎回同じ手順になるとは限らない。そのため、AIエージェントでは権限を絞り、影響の大きい操作の前に人が承認する設計が必要になる。
チャットAIは、人が質問や指示を入力するたびに、回答や文章を返します。次に何をするかは人が決め、回答をメールや業務システムに反映するのも人の作業です。
ワークフロー自動化やRPAは、あらかじめ決めた手順を、決めたとおりに実行します。RPAは、人がパソコンで行う画面操作を手順として登録し、くり返し実行する仕組みです。同じ入力には同じ処理をするため結果は安定しますが、手順にない例外が来ると止まるか、人に戻ります。
AIエージェントは、目標と使えるツールを渡すと、どのツールをどの順番で使うかをAIが決めます。例外にも対応しやすい一方で、毎回同じ手順になるとは限りません。そのため、AIに許す操作の範囲と、人が確認する場面を設計に含める必要があります。
3つは、どれかがどれかを置き換える関係ではありません。Anthropicは、手順をはっきり決められる業務ではワークフローのほうが予測しやすく安定しており、柔軟さとAIによる判断が必要な場面でエージェントが向くと説明しています。手順が決まっている部分は自動化し、判断が必要な部分だけをAIエージェントにする組み合わせもできます。構成の選び方は、AIエージェントの設計パターンとは?6つの型と業務に合わせた選び方で詳しく解説しています。
AIエージェントの仕組み:モデル、ツール、記憶、くり返しの処理
Anthropicは、エージェントの多くは、環境から返る結果を見ながら、ループの中でツールを使うAIだと説明しています。部品に分けると、次の4つになります。
モデル:次の行動を決める
大規模言語モデル(LLM)が、指示と現在の状況を読んで、次に何をするかを決めます。どのモデルを使うかで、判断の正確さ、処理の速さ、費用が変わります。モデルは各社で更新が続いているため、導入するときは提供元の最新の情報で選びます。
ツール:情報を取りに行き、操作する
ツールは、AIが呼び出せる機能です。Web検索、社内文書の検索、ファイルの読み書き、メールの送信、業務システムのAPIなどがあたります。AIはツールの説明を読んで、必要なものを選んで呼び出します。
社内外のシステムとAIをつなぐ共通の方式として、MCP(Model Context Protocol)があります。MCPの公式サイトは、MCPを「AIアプリケーションを外部のシステムにつなぐためのオープンソースの標準」と説明しています。
記憶:前の作業や会話を引き継ぐ
会話の履歴、作業の途中経過、利用者の好みなどを保存し、次の手順や次回の作業で使います。OpenAI Agents SDKやClaude Agent SDKのように、エージェントを作るためのSDKには、会話や作業の状態を保つセッションの機能が用意されています。
くり返しの処理と人の承認
エージェントは、考える、ツールを使う、結果を確かめる、という流れをくり返します。目標を達成したと判断するか、止める条件に達すると処理を終えます。Anthropicは、各段階でツールの実行結果などから進み具合を確かめること、確認点や行き詰まったときに人の判断を求めること、くり返し回数の上限などの停止条件を入れることを挙げています。
人の承認は、開発用のSDKにも機能として組み込まれています。たとえばClaude Agent SDKには、どのツールを自動で実行し、どのツールに承認を求めるかを決める権限の設定があります。OpenAIのドキュメントも、Agents SDKは承認の扱いをアプリケーション側で制御できると説明しています。
AIエージェントで業務の何ができるか
Anthropicは、エージェントが特に価値を出しやすい用途として顧客サポートとプログラム開発を挙げています。共通点は、対話と操作の両方を含み、成功の基準が明確で、結果を見て直すことができ、人による監督を組み込める業務であることです。
この条件は、事務や営業の業務にも当てはめられます。必要な情報があちこちのシステムに散らばっていて、調べてまとめる手間が大きく、最後に人が確認できる業務が候補になります。
想定例:AIエージェントに任せやすい業務
以下は説明のための架空の例です。
- 問い合わせ対応の下準備:問い合わせを読み、顧客情報、注文履歴、マニュアルを調べて回答案と根拠をまとめる。返金や契約に関わる回答は、担当者が承認してから送る。
- 社内の調べもの:社内規程や過去の議事録を検索し、質問への答えを参照元つきでまとめる。
- 請求書と発注データの照合:受け取った請求書の内容を読み取って発注データと照らし合わせ、金額や品目の食い違いを一覧にする。支払いの登録は経理担当が行う。
- 定期的な情報収集:毎朝決めた時刻に業界のニュースを集め、要点を社内のチャットに投稿する。
反対に、手順が毎回同じで例外がほとんどない業務は、ワークフロー自動化やRPAのほうが結果を予測しやすく、AIを呼び出す費用もかかりません。また、採用の合否や法的な判断のように誤りの影響が大きい業務は、AIエージェントには下準備までを任せ、判断は人が行う形にします。任せる仕事と人が確認する仕事の分け方は、AIエージェントに任せる仕事、人が確認する仕事の分け方で解説しています。
人手の限られた中小企業では、最初から多くの業務に広げるより、手間の大きい1つの業務の下準備から始めるほうが、かかった費用と減った作業時間を比べやすくなります。
AIエージェントの作り方:2026年時点の主な4つの方法
AIエージェントの作り方は、大きく4つに分かれます。以下の製品名は、2026年10月6日に各提供元の公式ページで確認したものです。この分野は名称や提供状況がよく変わります。たとえばOpenAIは、画面上でエージェントの処理を組み立てるAgent Builderについて、2026年6月3日に提供終了を告知し、11月30日に停止する予定としています。
ノーコード・ローコードのツールで作る
プログラムを書かずに、画面上でエージェントや処理の流れを組み立てる方法です。
- Microsoft Copilot Studio:Microsoftの公式ドキュメントは、エージェントとワークフローを作って管理するためのローコードの開発環境と説明しています。作ったエージェントはMicrosoft TeamsやWebサイトなどに公開でき、ワークフローには人の確認を入れる機能があります。
- Dify:エージェントやワークフロー、チャットボットを作り、Webアプリとして公開したりAPIで組み込んだりできる、オープンソースの開発基盤です。提供元が運用するクラウド版と、自社のサーバーで動かす版があります。
- n8n:業務の自動化ツールで、OpenAI、Anthropic、Googleなどのモデルにツールと記憶を加えたAIの処理を、ワークフローに組み込めます。
社内に開発者が少ない場合や、まず小さく試したい場合に向く方法です。一方で、細かな権限の制御や既存システムとの深い連携は、ツールが用意した機能の範囲に限られます。
開発用のSDK・フレームワークで作る
プログラムでエージェントを作り、自社のシステムに組み込む方法です。主な提供元の公式ドキュメントで、次のSDKやフレームワークが案内されています。
- OpenAI Agents SDK:エージェント、別のエージェントへの作業の引き渡し、入出力を確かめるガードレールを基本の部品とし、処理の記録(トレース)の機能を備えます。
- Claude Agent SDK:Anthropicが提供し、Claude Codeと同じツール、エージェントのループ、文脈の管理を、PythonとTypeScriptから使えます。
- Agent Development Kit(ADK):Googleが公開するオープンソースのフレームワークで、Python、TypeScript、Go、Java、Kotlinに対応しています。
- Microsoft Agent Framework:エージェントと、処理の経路を明示するワークフローを組み合わせて作れます。複数のモデルの提供元に対応しています。
権限の制御、操作の記録、既存システムとの連携を自社で細かく決められる反面、設計と保守を担う開発者が必要です。OpenAIのAgents APIやAnthropicのManaged Agentsのように、エージェントの実行環境を提供元が管理する方式も出ています。フレームワークと自社実装の選び方は、Q&A「LangChainなどのフレームワークと自社実装、どう選びますか?」でも整理しています。
既製のエージェント製品を使う
すでにエージェントとして動く製品を導入し、自社の業務に合わせて設定する方法です。たとえば、OpenClawは自社のPCやサーバーで動かし、SlackやMicrosoft Teamsなどのチャットからエージェントを使えるオープンソースのゲートウェイです。Hermes Agentは、Nous Researchが開発するオープンソースのエージェントで、使いながら記憶とスキルをためていく仕組みを持ちます。
どちらも導入は早い一方で、エージェントがコマンドの実行やファイルの操作をできるため、権限の設計が欠かせません。詳しくはOpenClawとは?できること、導入手順と業務利用の権限設計とHermes Agentとは?できること、インストール手順と業務利用の注意点で解説しています。
MCPで社内システムにつなぐ
MCPは、上の3つのどの方法とも組み合わせられる接続の方式です。OpenAI Agents SDK、Claude Agent SDK、ADK、Microsoft Agent Framework、n8nの公式ドキュメントは、いずれもMCPへの対応を記載しています。社内の顧客管理や受注管理のシステムにMCPサーバーを用意すれば、使うエージェントを替えても同じ接続を使い回せます。仕組みと権限の決め方は、MCPとは?MCPサーバーの仕組みと社内システム連携の権限設計で解説しています。
AIエージェントの導入前に決める5つのこと
AIエージェントの導入では、作り方を選ぶ前に、次の5つを決めておきます。
図の要点をテキストで読む
AIエージェントを導入する前に決める5つのことを順に並べた図。1は対象業務を1つ選び、成功とする状態を決める。2は権限を決め、読み取りから始めて書き込みや送信は必要な範囲だけ許す。3は人の承認を置く操作を決め、送信、支払い、削除などの前に担当者が確認する。4は評価の方法を決め、過去の実データで試して正確さと手直しの量を測る。5は費用を見積もり、1件あたりの費用と月の上限を決めてから対象を広げる。最後に、測った結果をもとに、対象を広げるか、今の範囲で続けるか、見直すかを判断する。
対象業務と成功の基準
最初は対象業務を1つに絞り、どの状態になれば成功とするかを決めます。「回答案をそのまま使える割合」「1件あたりの作業時間」のように、導入前と比べられる基準にします。基準がないと、試した結果を見ても続けるかどうかを判断できません。
権限
AIに許す操作は、読み取りから始めます。書き込み、送信、削除のように外部に影響する操作は、必要な範囲に限って許します。エージェント専用のアカウントを作り、人の担当者と同じ広い権限を渡さないことも大切です。
人の承認を置く操作
顧客へのメール送信、支払い、契約に関わる回答、データの削除など、取り消しにくい操作の前に人の承認を置きます。社内向けの下書きや情報の収集のように影響の小さい作業はAIに任せ、確認の手間を重要な操作に集中させます。
評価の方法
過去の実データでエージェントを試し、正確さ、人が手直しした量、処理にかかった時間を測ります。OpenAIは、エージェントの判断やツールの呼び出しの記録(トレース)を評価に使うことを勧めています。評価の指標の決め方は、Q&A「エージェントの評価指標には何を設定すべきですか?」でも整理しています。
費用
費用には、モデルの利用料、ツールやサービスの利用料、開発と保守の人件費があります。Anthropicは、エージェントは処理時間と費用を増やす代わりに性能を上げるものが多く、自律的に動く分だけ費用が増えると指摘しています。くり返しの回数や読み込む資料の量で利用料が変わるため、試行の段階で1件あたりの費用を測り、月の上限を決めてから対象を広げます。費用の考え方はQ&A「AIエージェント運用のコストはどの程度かかりますか?」も参考にしてください。
AIエージェントの導入でつまずきやすい点
最初から対象を広げすぎる
「問い合わせ対応をすべて任せる」のように対象を広く取ると、例外が多くなり、評価の基準も決めにくくなります。1つの業務で効果を確かめてから広げるほうが、原因の切り分けもしやすくなります。
権限を広く渡し、外部の文章に操られる
AIエージェントは、メールやWebページなど外部の文章を読んで作業します。OpenAIは、信頼できない文章に紛れた指示がAIへの指示を上書きしようとする「プロンプトインジェクション」を、よくある危険な攻撃として挙げています。攻撃者がいなくても、AIが想定より多くの情報を外部のツールに渡してしまうおそれもあるとしています。対策を重ねてもエージェントはだまされる可能性があるため、渡す権限を絞り、ツールの実行前に承認を求める設定を残すよう勧めています。
評価をしないまま使う範囲を広げる
試作の段階でうまく動いたように見えても、実際の業務では入力の種類も量も増えます。評価の基準と確認の手順を決めないまま対象を広げると、誤りに気づくのが遅れます。試作から本番運用に移すときの確認項目は、AIのPoCを本番運用に移すには?で解説しています。
製品の更新や提供終了に追いつかない
AIエージェントの製品やSDKは、更新の頻度が高く、提供終了になるものもあります。どの製品のどの版を使っているかを記録し、更新を確かめる担当者を決めておくと、仕様の変更や提供終了にも計画的に対応できます。
AIエージェントの導入を相談する場合
AIエージェントの導入では、対象業務の整理、作り方の選定、社内システムとの接続、権限と承認の設計、評価の方法を、まとめて決める必要があります。社内に設計と開発を進められる担当者がいる場合は、この記事の5つの項目を検討の出発点に使えます。
inovieでは、対象業務の整理からAIエージェントの設計、試作での検証、既存システムへの組み込みと運用後の改善までを支援しています。詳しくはAIエージェント導入・改善支援とAI導入・システム開発の支援をご覧ください。自社のどの業務からAIエージェントを試すべきかのご相談は、お問い合わせから受け付けています。
出典確認日:2026-10-06
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