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AI×BPO・業務引継ぎ

BPaaSとは?BPOやSaaSとの違い、向く業務と導入前の確認項目

BPaaSとは?BPOやSaaSとの違い、向く業務と導入前の確認項目

BPaaS(Business Process as a Service)とは、委託先が用意したクラウド上のシステムと、その上で業務を処理する運用とを、まとめてサービスとして利用する形です。業務を外部に任せる点はBPOと同じですが、委託先が複数の会社に共通のシステムと手順を用意し、利用する会社がその標準に合わせて使う点が異なります。この記事では、BPaaSの意味と、BPO・SaaS・AI×BPOとの違い、注目される背景、向く業務、導入する前に確かめる項目を整理します。BPOそのものの定義や市場の概要は、AI×BPOとは?従来のBPOとの違いと向く業務、委託前の確認項目で解説しています。

BPaaSとは:クラウドの仕組みと運用をまとめて任せるサービス

BPaaSは「Business Process as a Service」の略で、「ビーパース」とも読みます。三菱UFJリサーチ&コンサルティングの経営用語集は、BPaaSを「クラウド上で提供される業務プロセス全体をアウトソーシングするサービス」と説明し、従来のBPOにクラウド技術を組み合わせたもので、企業は自社でインフラを構築せずに必要な業務プロセスをクラウド経由で利用できるとしています。

確認した範囲では、BPaaSには法令や官公庁の統計で定められた定義は見当たりません。サービスを提供する会社によって、指している範囲にも幅があります。そこでこの記事では、次の3つがそろったサービスをBPaaSと呼びます。

  • 共通の仕組みがある:委託先が用意したクラウドのシステムを、複数の利用企業が使う。
  • 手順が標準になっている:業務の流れや入力の形をサービス側が決めていて、利用企業はそれに合わせる。
  • 運用まで任せられる:システムの提供だけでなく、その上での処理や確認を委託先の担当者が行う。

利用する会社から見ると、システムを選んで設定し、操作する人を社内で用意する手間を、まとめて外に出せる点が特徴です。その代わり、業務の進め方はサービスの標準に寄せることになります。

BPaaSとBPO、SaaS、AI×BPOの違い

三菱UFJリサーチ&コンサルティングの用語集は、BPOが物理的なリソースと人力に依存するのに対してBPaaSはクラウド技術を活用すること、SaaSがソフトウエアの利用に特化しているのに対してBPaaSは業務プロセス全体を支えることを違いとして挙げています。ここに、AIを組み込んだBPO(AI×BPO)を加えて比べます。

BPO、SaaS、BPaaS、AI×BPOの違い
図の要点をテキストで読む

BPO、SaaS、BPaaS、AI×BPOの比較。BPOは委託先の人が作業し、依頼元の手順で回し、量が増えたら人を増やす。SaaSはクラウドのソフトを社内の社員が操作し、設定で自社に寄せ、運用と確認も社内で行う。BPaaSは委託先の基盤で委託先が処理し、利用企業は標準の手順に従い、承認と確認は社内に残る。AI×BPOはAIが読み取りと下書きを作り、人が確認と例外対応を担い、依頼元の手順を引き継いで仕組み化する。比べる軸は、誰が作業し、手順をどちらに合わせるか。BPaaSにAIを組み込む形もある。

BPOとの違い:手順を自社に合わせるか、標準に合わせるか

従来のBPOでは、委託先が依頼元の業務を聞き取り、依頼元のシステムや手順に合わせて人を配置するのが一般的です。会社ごとの細かい手順にも対応しやすい一方で、手順を委託先の担当者が覚えるまでに時間がかかり、量が増えたときは人を増やして対応します。

BPaaSでは、委託先のシステムと標準の手順が先にあり、利用企業は自社の業務をそこに合わせます。立ち上げの手間を抑えやすい反面、自社だけの手順や例外が多い業務では、合わせきれない部分が残ります。

SaaSとの違い:操作する人が社内か社外か

SaaSは、クラウドで提供されるソフトウエアを自社の社員が操作して業務を行う形です。経理のクラウドサービスを導入しても、請求書の入力や確認は社内の担当者が行います。BPaaSでは、そのシステム上の処理や確認も委託先が担います。自社に残るのは、資料の提出、判断が必要な案件の承認、結果の確認です。

AI×BPOとの関係:比べる軸が異なる

AI×BPOは、inovieのブログでは、委託先がAIを使って業務の一部を処理し、人が判断と確認を行う運用を指す言葉として使っています。BPaaSが「共通の仕組みと標準の手順で提供するか」という提供の形に注目した言葉であるのに対し、AI×BPOは「委託した業務の中でAIと人がどう分担するか」に注目した言葉です。そのため、両者は対立するものではなく、AIを組み込んだBPaaSも成り立ちます。依頼元の手順を引き継いでAIで仕組み化していく委託は、標準に合わせるBPaaSよりもAI×BPOとして説明するほうが実態に合います。

BPaaSが注目される背景:人手不足、クラウド、AI

BPaaSだけを対象にした公的な統計は見当たらないため、ここではBPO全体についての調査から背景を見ます。

1つ目は人手不足です。厚生労働省の「令和8年版 労働経済の分析」は、企業の雇用人員判断D.I.をもとに、2025年は全産業で人手不足感が高止まりしていると分析しています。企業規模別では、2021年以降すべての規模で人手不足感が強まり、2025年は特に中堅企業と中小企業で強まったとしています。経理や人事の担当者を採用しにくい会社にとって、業務を仕組みごと外に任せる選択肢の意味は大きくなっています。

2つ目はクラウドの普及です。矢野経済研究所が2025年11月に公表したBPO市場の調査は、安価なクラウド基盤のシステムの導入に合わせてBPOサービスを利用する企業が、大手企業から中堅・中小企業へ広がる動きが続いていると指摘しています。システムを自社で持たずに使えることが、規模の小さい会社がBPOを使う入口になっていると読めます。

3つ目はAIです。IDC Japanが2025年4月に発表した国内BPOサービス市場の予測では、人事BPOで人手不足を背景に中堅・中小企業でも支出が増えたとしています。同社のアナリストは、AIや生成AIの活用が、BPOのサービス提供の形を人(オペレーター)中心からデジタルアセット中心へ変えつつあると述べています。

BPaaSに向く業務、向かない業務

BPaaSに向くのは、会社が違っても手順の大部分が共通している業務です。次の条件に多く当てはまるほど、サービスの標準に合わせやすくなります。

  • 手順が制度や慣行で決まっている:給与計算や年末調整、請求書の処理のように、法令や商習慣で流れがほぼ決まっている。
  • 繰り返し発生する:毎月の締めや毎日の受注のように、同じ処理が一定の量で続く。
  • 入力と出力の形がそろっている:決まった書類やデータを受け取り、決まった形で結果を返す。

経理(請求書の受領と照合、支払データの作成、経費精算の確認)、給与計算と勤怠の集計、受発注データの入力などが当てはまります。どの業務から始めるかは、Q&A「バックオフィス(経理・人事・総務)のAI×BPOは、どこから始めればよいですか?」でも整理しています。

向かないのは、自社独自の判断が業務の中心にある仕事です。取引先ごとに条件や例外が多い営業事務、頻繁にルールが変わる業務、価格や与信の判断のように会社としての判断を含む業務は、標準の手順に合わせると抜けや手戻りが出やすくなります。こうした業務は、手順を引き継いで委託するBPOや、社内での仕組み化と比べて検討します。

想定例:請求書の受領と支払データの作成をBPaaSで任せる場合

以下は説明のための架空の例です。取引先から届く請求書の受領から、支払データの作成までを任せるとします。

利用企業は、請求書の受け取り先をサービスの窓口に切り替えます。委託先は、届いた請求書をサービスのシステムに取り込み、項目を読み取って発注データと照合し、支払予定の一覧を作ります。金額が発注と合わない請求書や、新しい取引先の請求書は、理由を付けて利用企業に確認を求めます。利用企業は確認が必要な案件の判断と、支払予定の承認を行います。支払の実行は利用企業が行います。

この例では、勘定科目の付け方や承認の流れをサービスの標準に合わせられるかどうかが、導入の可否を分けます。

BPaaSを導入する前に確かめる4つの項目

BPaaSは、標準に合わせることで手間を減らすサービスです。そのため、合わせられるかどうかと、合わなくなったときに抜けられるかどうかを、契約の前に確かめておきます。

BPaaSを導入する前に確かめる流れ
図の要点をテキストで読む

BPaaSを導入する前に確かめる5つの段階。1は業務の棚卸しで、今の手順と例外を書き出す。2は標準と比べ、サービスの流れとの違いを洗い出す。3は合わせる範囲を決め、違いを設定で対応できるもの、追加費用で対応できるもの、対応できないものに分ける。4はデータの扱いで、保存場所と権限、再委託、AIでの処理を確かめる。5は解約と移行で、データの返し方と移行期間を決める。合わない場合は、手順を引き継ぐ委託や社内での仕組み化と比べる。

業務の標準化度合い:今の手順を標準に合わせられるか

まず、任せたい業務の今の手順を書き出し、サービスの標準の流れと比べます。違いがある部分は、自社の手順を変えて合わせるのか、サービス側で対応してもらうのかを分けます。担当者しか知らない手順が残っていると、比べること自体ができません。手順書がない業務は、先に棚卸しをしておきます。

自社に合わせられる範囲:設定で変えられること、変えられないこと

承認の段数、勘定科目や部門の区分、帳票の形、既存システムとのデータのやり取りなど、自社に合わせたい点を挙げ、設定で対応できるもの、追加の費用で対応できるもの、対応できないものに分けて確かめます。対応できない部分を社内の作業として残す場合は、その作業を誰が担うかも決めておきます。

データの扱い:保存場所、権限、委託先の監督

BPaaSでは、請求書や給与のデータが委託先のシステムに保存されます。個人データの取扱いを委託する場合、委託元は委託先を監督する義務を負います(個人情報保護法第25条)。個人情報保護委員会のガイドライン(通則編)は、適切な委託先の選定、委託契約の締結、委託先での取扱状況の把握を求め、再委託についても委託先から報告を受けるなどして確かめることが望ましいとしています。

あわせて、データを保存する場所、委託先の担当者が見られる範囲、自社のシステムに付与する権限、AIを使う場合は入力したデータの扱いを確かめます。

解約と移行:データと手順を持ち出せるか

契約を終えるときに、処理の記録や取引データをどの形式で受け取れるか、委託先のシステムの中にしかない設定や手順が残らないかを確かめます。標準の手順に合わせて業務を変えたあとで解約すると、社内に業務を戻すときや別の委託先へ移るときに、手順を一から作り直すことになりかねません。移行の期間と、その間の並行稼働の扱いも契約で決めておきます。何を受け取っておくべきかは、Q&A「AI×BPO運用のナレッジ移転(Knowledge Transfer)は、何を渡すべきですか?」も参考にしてください。

AIによるBPaaSの変化

先に挙げたとおり、IDC Japanは、AIの活用がBPOの提供の形を人中心からデジタルアセット中心へ変えつつあると見ています。矢野経済研究所の調査も、生成AIを活用したBPOサービスの実用化に向けた動きが活発になっていると述べています。BPaaSに当てはめると、次の変化が考えられます。

1つは、標準に乗せられる業務の範囲です。これまでは、形式がそろわない書類やメールでの依頼は、人が読み取って標準の形に直す必要がありました。AIで項目を読み取って下書きを作れるようになれば、入力の形がそろっていない業務も標準の流れに乗せやすくなります。

もう1つは、委託先の中での人とAIの分担です。読み取りや照合をAIが行い、人が確認と例外への対応を受け持つ形になると、利用企業が確かめるべき点も変わります。AIの出力を委託先の誰がどの基準で確認するのか、誤りが見つかったときに誰が直すのかを、契約の前に聞いておく必要があります。AIの出力の確かめ方や、試行から本番への移し方は、AIのPoCを本番運用に移すには?でも解説しています。

ただし、AIを使うかどうかで、標準に合わせられるかという前提が変わるわけではありません。サービスの標準と自社の業務の違いが大きい場合は、AIを使っていても合わない部分が残ります。

標準に合わない業務の任せ方:inovieの引継ぎ代行プラス

BPaaSは、標準に合わせられる業務を手間をかけずに外へ出すのに向いています。一方で、担当者ごとに手順が違う業務や、手順書がない業務は、そのままでは標準に乗りません。

inovieが運営する引継ぎ代行プラスは、社員が退職するときや産休・育休で休むときに、会社に代わって業務の引継ぎを受け、後任の方が決まるまでリモートで業務を代行するサービスです。サービスの標準に合わせてもらうのではなく、今の担当者から手順を引き継ぎ、マニュアルや動画、引継ぎAIを作ったうえで業務を回し、入力や受発注、集計といった定型業務を仕組み化していきます。この記事の整理でいえば、依頼元の手順を引き継いでAIで仕組み化するAI×BPOにあたります。

inovieでは、業務の整理から既存システムへのAIの組み込みまでを支援するAI導入・システム開発の支援も行っています。サービスの一覧はサービスをご覧ください。BPaaSを使うか、手順を引き継いで委託するか、社内で仕組み化するかのご相談は、お問い合わせから受け付けています。

出典確認日:2026-10-06

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