オンライン秘書とは?頼める業務と料金体系、選び方と契約の注意

オンライン秘書とは、日程調整やメールの一次対応、請求書の作成、採用の事務、Webサイトの更新といった事務作業を、インターネットを通じて外部の担当者に任せるサービスです。オンラインアシスタントとも呼ばれます。社内に席を用意せずに事務の手を借りられる一方で、頼める業務には限りがあり、契約の形によっては依頼の出し方に注意が要ります。この記事では、オンライン秘書に頼める業務と向かない業務、料金体系の種類、メリットとデメリット、選び方、契約と運用の注意点、BPOや引継ぎ代行との違いを整理します。
オンライン秘書とは:事務作業をリモートで外部に任せるサービス
オンライン秘書は、法律で定義された用語ではありません。サービスによって「オンライン秘書」「オンラインアシスタント」と呼び方が分かれ、頼める範囲にも幅があります。この記事では、事務作業の一部を、チャットやオンライン会議、共有のツールを通じて外部の担当者に継続して任せるサービスをオンライン秘書と呼び、オンラインアシスタントも同じ意味で扱います。
提供の形は、大きく2つに分かれます。1つは、運営する会社が窓口の担当者を置き、複数の担当者がチームで依頼を受ける形です。もう1つは、個人で働く秘書やアシスタントと、直接またはマッチングのサービスを通じて契約する形です。どちらの形でも、契約は業務委託として結ぶのが一般的で、人材派遣とは異なります。
一定の事務を継続して処理してもらう業務委託は、準委任として契約することが多くあります。民法は、法律行為でない事務の委託に委任の規定を当てはめるとしており(第656条)、これを準委任と呼びます。業務委託では、作業の進め方を決めて担当者に指示を出すのは受託した側です。依頼する側が担当者に細かな指示を出し続けると、派遣との区別で問題になります。この点は、後の「契約と運用の注意点」で説明します。
オンライン秘書に頼める業務
オンライン秘書に頼めるのは、パソコンとインターネットで完結し、手順と期限を決められる事務です。主な業務を4つの分野に分けて紹介します。資格が必要な手続きと会社としての判断は、オンライン秘書に任せる範囲から外します。
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オンライン秘書に任せる範囲の整理。頼みやすいのは手順と期限を決められる事務で、日程調整とメールの一次対応、請求書の作成と経費精算の確認、応募者への連絡と面接の日程調整、Webの更新とデータ入力が当てはまる。専門家に依頼するのは資格が必要な手続きで、申告書の作成と税務相談は税理士、社会保険の届出書類の作成と提出の代行は社会保険労務士の業務。社内に残すのは会社としての判断で、支払いの承認と実行、価格の決定と契約の締結、採用の合否と人事評価が当てはまる。任せる前に、手順と判断の基準を書き出しておく。
秘書業務:日程調整、メール、出張の手配
- 日程調整:社内外の相手との会議の候補日を出し、カレンダーに登録する。
- メールと問い合わせの一次対応:決めた文面で返信し、判断が要るものを依頼元に回す。
- 出張や会食の手配:交通や宿泊、店の候補を調べて予約する。
- 資料と議事録:会議の議事録を作り、提案書や社内資料の体裁を整える。
経理補助:請求書の作成や経費精算の確認
請求書の作成と送付、入金の確認、経費精算の申請と領収書の突き合わせ、会計ソフトへの入力などを頼めます。一方で、税理士法は、税務書類の作成や税務相談を税理士の業務とし、税理士でない者がこれを行うことを制限しています(第2条、第52条)。申告書の作成や税額の相談は、オンライン秘書ではなく税理士に依頼します。経理の外部委託で任せられる範囲は、経理代行とは?経理アウトソーシングで任せられる業務と注意点で詳しく解説しています。
人事・採用の事務:応募者への連絡や書類の回収
応募者への連絡、面接の日程調整、入社書類の案内と回収、勤怠データの集計などを頼めます。社会保険や労働保険の届出書類の作成と提出の代行は、社会保険労務士法が定める社会保険労務士の業務です(第2条)。社会保険労務士でない者が、他人の求めに応じ報酬を得てこれらを業として行うことは制限されています(第27条)。採用の合否や人事評価は、会社として判断する事柄なので社内に残します。
Webの更新とデータ作業
Webサイトのお知らせの更新、ネットショップの商品登録、SNSの投稿の予約、データ入力、調べものと結果のまとめ、定例のレポートの作成なども頼めます。どれも、手順と期限を決めておけば依頼しやすい業務です。
オンライン秘書に向かない業務
次のような業務は、オンライン秘書に任せにくいか、サービスによっては対応の範囲外です。
- 現地での作業が要る業務:郵便物の受け取り、来客の対応、書類への押印、備品の管理。
- お金を動かす操作:振込の実行や決済。任せるのは振込データの作成までにして、承認と実行は社内に残します。
- 機密性の高い情報を扱う業務:マイナンバーやクレジットカードの情報など。
- 会社としての判断:価格や値引きの決定、契約の締結、採用の合否、人事評価。
- 判断の基準が担当者の頭の中にしかない業務:手順と基準を書き出すまでは任せられません。
- すぐに答えが要る業務:担当者の稼働する時間帯や、返信までの目安より早い対応が求められるもの。
たとえばHELP YOUの公式サイトは、オンラインで完結しない業務、決済業務、マイナンバーやクレジットカードなどの機密情報を取り扱う業務を、対応できない業務として挙げています。どこまでを対象外とするかはサービスごとに違うため、頼みたい業務を一覧にして、契約の前に確かめます。
オンライン秘書の料金体系の種類
オンライン秘書の料金は、任せる業務の量と、担当する人の体制によって決まります。料金体系は、主に次の2つに分かれます。
月額の時間パック:毎月の実働時間を決める
代表的なのは、毎月使える実働時間を決め、その時間分を月額で払う形です。時間パックの条件は、次の点がサービスによって違います。
- 使わなかった時間を翌月に繰り越せるか。
- 決めた時間を超えたときの料金と、超えられる時間の上限。
- 最低利用期間と、解約を申し出る期限。
- 時間の数え方(何分単位で数えるか)と、窓口の担当者とのやり取りを実働に含めるか。
- 初期費用の有無。
例として、2026年10月7日に各社の公式ページで確認した条件を挙げます。フジ子さんの料金ページによると、プランは月ごとの時間を決める形で、契約期間は1か月の自動更新です。プランの時間を超える依頼には時間単価の1.5倍の超過料金が加算され、翌月へ時間を繰り越せるプランもあるとしています。HELP YOUの料金ページによると、平均5名のチームで対応するチームプランと、1名を指名する専属プランがあり、どちらも最低利用期間は6か月です。
料金の金額は、プランや時期によって変わるため、この記事では載せていません。比べるときは、各社の公式ページで最新の金額と条件を確かめてください。
従量やスポット:作業や期間ごとに払う
作業1件ごとに料金を決める形や、期間を区切って必要な人数の体制を組むスポットの形もあります。個人と直接契約する場合は、時間単価や作業単位で報酬を決めることもあります。毎月の作業量が少ない業務や、時期が限られる業務に向く形です。
見積もりを比べるときにそろえる前提
月にどれだけの時間が要るかは、業務ごとに1回あたりの作業時間と月の回数を書き出して見積もります。複数のサービスを比べるときは、任せる業務の一覧、月の件数、締めの期限をそろえて伝えます。前提がそろっていないと、月額の差が料金の差なのか、見込んだ作業量の差なのかを判断できません。
オンライン秘書のメリットとデメリット
オンライン秘書のメリットは、主に次の4つです。
- 採用と教育の手間をかけずに、事務の手を確保できる:事務の担当者を採用し、仕事を教える負担を減らせます。
- 必要な量だけ使える:時間パックや従量の範囲で、業務量に合わせて使えます。
- 席や機材の用意が要らない:作業はリモートで行うため、社内に席やパソコンを用意する必要がありません。
- 手順が文書になる:外部に頼むには手順と期限を書き出す必要があり、担当者の頭の中にあった作業が文書として残ります。
デメリットもあります。依頼の文面を書き、仕上がりを確かめる時間は社内に残ります。社内の事情や暗黙のルールは、文章にしない限り伝わりません。時間パックでは、使い切れなかった月も料金がかかり、決めた時間を超えると追加の料金がかかります。また、業務のやり方を外部の担当者だけが覚えている状態になると、契約をやめたときに社内で業務を回せなくなります。
オンライン秘書の選び方:確かめる4つの点
オンライン秘書を選ぶときは、料金に加えて、対応範囲、担当者の体制、情報の扱いと権限、手順書の扱いの4つを確かめます。
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オンライン秘書を選ぶときに確かめる4つの点。対応範囲では、対象外の業務、税理士や社会保険労務士の業務の扱い、稼働時間と返信の目安を確かめる。担当者の体制では、窓口の担当者、チーム制か専属か、担当者が替わるときの引継ぎを確かめる。情報と権限では、秘密保持契約、担当者ごとのアカウントと権限、再委託の有無を確かめる。手順書では、誰が作って共有するか、例外の記録、契約終了時に受け取るものを確かめる。比べるときは、任せる業務の一覧と月の件数をそろえて見積もりを取る。
対応範囲:頼みたい業務が入っているか
頼みたい業務の一覧を渡し、業務ごとに対応できるかを確かめます。対象外の業務、税理士や社会保険労務士の業務をどう扱うか、担当者が稼働する曜日と時間帯、返信までの目安も聞いておきます。
担当者の体制:窓口と、担当者が替わったときの対応
チームで対応するサービスでは、窓口の担当者が依頼を受け、作業する担当者に割り振ります。担当者が休むときや替わるときに、業務をどう引き継ぐのかを確かめます。1名の専属の担当者がつく形では、その担当者が休んだときの代わりの体制も確かめます。
情報の扱いと権限:渡す範囲を決める
秘密保持契約を結ぶか、作業する担当者とも秘密保持の取り決めがあるかを確かめます。ツールのアカウントは担当者ごとに発行し、作業に必要な権限だけを付け、契約が終わったら止めます。
再委託の扱いも確かめます。民法は、受任者は委任者の許諾を得たとき、またはやむを得ない事由があるときでなければ復受任者を選任できないと定めています(第644条の2)。この規定は準委任にも当てはめられます。個人と契約するマッチングの形では、誰が実際に作業するのかを契約の前に確かめます。
顧客や従業員の個人データを扱う業務を任せる場合、委託元は委託先を監督する義務を負います(個人情報保護法第25条)。個人情報保護委員会のガイドライン(通則編)は、適切な委託先の選定、委託契約の締結、委託先での取扱状況の把握を求めています。
手順書の扱い:誰が作り、誰が持つか
委託先が業務の手順書を作るか、依頼元もそれを受け取れるかを確かめます。契約を終えるときに受け取るもの(手順書、作業の記録、例外の対応の記録)も決めておきます。手順書の書き方は、手順書の作り方とテンプレート、業務マニュアルとの違いと更新の方法で解説しています。
オンライン秘書の契約と運用の注意点
オンライン秘書を使い始めてからは、依頼の出し方、手順書の渡し方、個人と契約する場合のルールの3点に注意します。
依頼は窓口を通じて出す
厚生労働省の告示(労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準)は、業務を請け負う事業主が、自分の雇う労働者への業務の遂行方法の指示や、始業・終業の時刻、配置の決定などの管理を自ら行うことを求めています。これを満たさない場合は、労働者派遣事業として扱われます。
オンライン秘書の担当者に、依頼元が作業の順序や時間の使い方を直接指示し続けると、契約が業務委託であっても偽装請負と判断されるおそれがあります。依頼は窓口に出し、何をいつまでにどの基準で仕上げてほしいかを伝えます。担当者の割り振りと作業の進め方は委託先に任せます。業務委託と派遣の違いは、アウトソーシングとは?派遣・業務委託・BPOとの違いと任せ方で詳しく解説しています。
手順書は、要件と判断の基準として渡す
依頼元が今使っている手順書は、業務の内容を伝える資料として役立ちます。ただし、依頼元が作業の順序や方法を文書で細かく決め、そのとおりに作業させる形は、指示の実態として問題になるおそれがあります。渡すのは、仕上がりの基準と、判断の基準、例外のときに依頼元へ戻す条件です。委託先はそれをもとに自分たちの手順書を作り、依頼元はその手順書を受け取ります。
個人と直接契約するときは取引条件を明示する
フリーランスの個人に業務を委託する場合は、特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス・事業者間取引適正化等法)の対象になることがあります。公正取引委員会の説明によると、この法律は2024年11月1日に施行され、発注事業者に、給付の内容、報酬の額、支払期日などの取引条件を明示することを求めています。報酬の減額や受領拒否などの禁止行為も定められています。依頼の内容や報酬は、メッセージのやり取りだけで済ませず、書面や電子メールなどで残します。
想定例:日程調整と請求書の作成を任せる場合
以下は説明のための架空の例です。社員15名の会社で、社長の日程調整と、毎月の請求書の作成をオンライン秘書に任せるとします。
会社は、日程調整で優先する予定の基準と、社長に確認が要る予定の条件を一覧にして窓口に渡します。請求書は、月末に営業担当が共有のシートに入力した取引をもとに、委託先が会計ソフトで作って送付します。値引きや支払条件の変更が入る取引は、委託先が依頼元に戻します。委託先は手順書を作って依頼元と共有し、毎月の報告に、依頼元に戻した件数とその理由を書きます。依頼元は報告を見て、判断の基準に足りない条件を追加します。
オンライン秘書とBPO・引継ぎ代行の違い
業務を外部に任せるサービスには、オンライン秘書のほかに、BPOや引継ぎ代行があります。違いは、何をどの単位で任せるかです。
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オンライン秘書、BPO、引継ぎ代行の比較表。オンライン秘書は個々の事務作業を依頼ごとに任せ、依頼元が窓口に作業を依頼する。日々の事務の手が足りないときに向き、契約期間の終了や解約で終わる。BPOは業務の流れをまとめて任せ、依頼元が処理の要件を決めて委託先が手順を持つ。決まった業務を継続して外に出すときに向き、契約が終わった後は業務を社内か別の委託先に移す。引継ぎ代行は退職や休職で空く担当者の業務を預かり、引継ぎを受けた側が手順書で業務を回す。担当者が辞める、休む、後任が決まらないときに向き、後任が決まったら後任の方へ引き継いで終える。
オンライン秘書は、日々の事務作業を、依頼ごとに任せる使い方が中心です。何を頼むかは依頼元が決め、毎回窓口に依頼を出します。
BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)は、受注から請求までのような業務の流れをまとめて委託する形です。依頼元は処理の要件と品質の基準を決め、手順と担当者の管理は委託先が持ちます。BPOの意味と対象になる業務はBPOとは?意味と業務の例、派遣・アウトソーシングとの違いと選び方で解説しています。AIを組み込んだBPOはAI×BPOとは?従来のBPOとの違いと向く業務、委託前の確認項目で、委託先のクラウドの仕組みごと任せる形はBPaaSとは?BPOやSaaSとの違い、向く業務と導入前の確認項目で解説しています。
引継ぎ代行は、社員の退職や休職で担当者がいなくなる業務について、引継ぎを受けたうえで業務を回すサービスです。オンライン秘書が切り出した作業を依頼ごとに受けるのに対して、引継ぎ代行は担当者が持っていた業務をまとめて預かります。
退職・休職で空く業務には引継ぎ代行プラス
inovieが運営する引継ぎ代行プラスは、オンライン秘書のサービスではありません。社員が退職するときや、産休・育休、休職で休むときに、会社に代わって業務の引継ぎを受け、後任の方が決まるまでリモートで業務を代行するサービスです。
引継ぎでは、業務ごとの手順書(マニュアル)、画面操作を録画した動画マニュアル、マニュアルと動画をもとに質問に答える引継ぎAIを作り、それを使って業務を回します。受注入力や見積書・発注書の作成、問い合わせの一次対応、データ入力などの定型事務が中心で、契約の締結や価格の判断、支払いの実行は会社に残します。経理と給与計算は、日々の処理ではなく引継ぎまでを担当します。権限は必要なものだけを期限付きで預かり、秘密保持契約を結びます。後任の方が決まったら、手順書と実際に業務を回した記録を使って、後任の方に引き継ぎます。
日々の秘書業務を継続して頼みたい場合はオンライン秘書が向き、担当者の退職や休職で業務がまとめて空く場合は引継ぎ代行が向きます。退職が決まってからの引継ぎの進め方は、退職が決まったら引継ぎはどう進める?最終出社日までの手順と引継ぎ先で解説しています。どの業務を外部に任せ、どの業務を社内に残すかのご相談は、お問い合わせから受け付けています。
出典確認日:2026-10-07
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