本文へ移動

AI×BPO・業務引継ぎ

経理代行とは?経理アウトソーシングで任せられる業務と注意点

経理代行とは?経理アウトソーシングで任せられる業務と注意点

経理代行とは、記帳や請求書の発行、支払いの準備、経費精算の確認といった経理の作業を、外部の会社に継続して任せるサービスです。経理アウトソーシングとも呼ばれます。経理の担当者を採用しにくいときや、担当者が退職するときの選択肢になる一方で、「やめとけ」という声も見かけます。この記事では、経理代行で任せられる業務と税理士に依頼する業務の境目、メリットとデメリット、うまくいかない理由と防ぎ方、始める前の準備、電子帳簿保存法とインボイス制度で確かめること、AIで変わる作業を整理します。業務を外部に任せる形の全体像は、AI×BPOとは?従来のBPOとの違いと向く業務、委託前の確認項目で解説しています。

経理代行とは:経理の作業を外部の会社に任せる委託

経理代行は、法律で定義された用語ではありません。記帳だけを請け負うサービスから、請求、支払い、給与計算までまとめて請け負うサービスまで、提供する会社によって範囲に幅があります。この記事では、会社の経理の作業の一部またはまとまった範囲を、外部の会社に継続して任せることを経理代行と呼び、経理アウトソーシングも同じ意味で扱います。

経理代行を請け負うのは、経理代行を専門にする会社、BPO(業務プロセスの外部委託)の会社、税理士事務所などです。どこに頼むかによって、任せられる業務の範囲が変わります。特に、税金の申告書の作成や税務の相談は、税理士でなければ行えません。この境目は次の節で説明します。

進め方には、委託先が自社の会計ソフトにログインして作業する形と、委託先のシステムに証憑を送って処理してもらう形があります。後者は、委託先の仕組みと運用をまとめて使うBPaaSに近い形です。違いはBPaaSとは?BPOやSaaSとの違い、向く業務と導入前の確認項目で整理しています。

経理代行で任せられる業務と、税理士に依頼する業務

経理の仕事は、任せやすい作業、社内に残す判断、税理士や社会保険労務士に依頼する業務の3つに分けて考えると、委託の範囲を決めやすくなります。

経理代行で任せる業務と、社内・専門家に残す業務
図の要点をテキストで読む

経理の仕事を4つに分けた表。経理代行に任せやすいのは、記帳、請求書の発行と入金の確認、支払データの作成、経費精算の確認で、手順と期限を書面で決めて任せる。社内に残すのは、支払いの承認と実行、取引条件や例外の判断で、口座と承認の権限は社内に置く。税理士に依頼するのは、税務代理、税務書類の作成、税務相談で、税理士法により税理士または税理士法人でない者は行えない。社会保険労務士に依頼するのは、社会保険や労働保険の届出書類の作成と提出の代行で、社会保険労務士法で業務が制限されている。

任せやすい業務:手順と期限が決まっている作業

経理代行に任せやすいのは、手順と期限が決まっていて、結果を社内で確かめられる作業です。

  • 記帳:領収書や請求書、預金の明細から仕訳を入力する。
  • 請求書の発行と入金の確認:請求のデータから請求書を作り、入金と照らし合わせて消し込む。
  • 支払いの準備:受け取った請求書を確認し、支払予定の一覧や振込データを作る。
  • 経費精算の確認:申請と領収書を突き合わせ、社内の規程に合うかを確かめる。
  • 給与計算の一部:勤怠の集計、給与の計算、給与明細の作成。
  • 月次の資料:試算表や部門別の集計の作成。

社内に残す判断:お金と取引条件にかかわること

支払いの承認と実行、預金口座や印鑑の管理、取引先との条件の決定、規程にない支出の扱いは、社内に残します。経理代行に任せるのは作業であり、会社としてお金を動かす判断と権限は社内の責任者が持ちます。委託先が作った振込データを社内の責任者が承認して実行する形にしておくと、誤りがあっても支払いの前に止められます。

税理士に依頼する業務:税務代理・税務書類の作成・税務相談

税理士法第2条第1項は、税理士の業務として、税務代理、税務書類の作成、税務相談の3つを定めています。税務代理は、税務署への申告や申請などを本人に代わって行うことです。税務書類の作成は、税務署に提出する申告書などを作ることです。税務相談は、申告などに関して税額の計算にかかわる事項の相談に応じることです。同法第52条は、税理士または税理士法人でない者は、この法律に別段の定めがある場合を除いて、これらの税理士業務を行ってはならないとしています。

一方で、会計帳簿の記帳の代行は、同法第2条第2項で、税理士が税理士業務に付随して行える財務に関する事務として、第1項の3つとは別に書かれています。記帳の代行そのものは、第52条が制限する税理士業務には含まれていません。

そのため、税理士ではない経理代行の会社には、記帳や請求、支払いの準備は任せられても、法人税や消費税の申告書の作成、税額についての相談は任せられません。決算と申告を顧問の税理士に依頼するのか、税理士と連携している経理代行の会社に任せるのかを決め、誰が何を行うかを契約で分けておきます。

社会保険の手続きは社会保険労務士の業務

給与計算に付随する社会保険や労働保険の届出書類の作成と、その提出の代行は、社会保険労務士法第2条が定める社会保険労務士の業務です。同法第27条は、社会保険労務士または社会保険労務士法人でない者が、他人の求めに応じ報酬を得てこれらの事務を業として行うことを、他の法律に別段の定めがある場合などを除いて制限しています。給与計算を任せるときは、入退社や算定基礎の届出を誰が作るのかもあわせて確かめます。

経理代行のメリットとデメリット

経理代行のメリットは、主に次の4つです。

  • 担当者の退職や休職で止まりにくい:経理を1人で担当している会社では、その人が辞めると請求や支払いの手順がわからなくなることがあります。委託先が手順を持っていれば、社内の担当者が替わっても作業は続きます。
  • 採用と教育の手間が減る:経理の経験者を採用し、社内のやり方を教える負担を減らせます。
  • 手順が文書になる:外部に任せるには、手順と期限を書き出す必要があります。担当者の頭の中にあった作業が文書として残ります。属人化の考え方は属人化とは?起きる原因とリスク、業務の属人化を解消する手順で解説しています。
  • 作業の量に合わせやすい:決算期や取引の増減に合わせて、委託する量を契約の範囲で調整できます。

デメリットもあります。証憑を集めて渡す作業や、委託先からの質問への回答は社内に残るため、社内の手間がなくなるわけではありません。証憑の受け渡しを待つぶん、月次の数字がそろうのが社内で処理するより遅れる場合もあります。給与や取引先の情報を社外に渡すことになり、経理の知識が社内に残りにくくなります。費用は任せる範囲と量によって決まるため、複数の会社を比べるときは、見積もりの前提(範囲、件数、締めの期限)をそろえます。

経理代行は「やめとけ」と言われる理由と防ぎ方

経理のアウトソーシングについて「やめとけ」と言われる理由には、次のようなものがあります。いずれも、任せる前の取り決めである程度防げます。

情報の行き違い:取引の背景が伝わらない

委託先は、証憑に書かれていることしかわかりません。取引の背景が伝わらないと、勘定科目の誤りや確認の往復が増えます。社内の窓口を1人に決め、質問の受け方(チャット、確認事項の一覧など)と回答の期限を決めておきます。取引先ごとの締め日、支払日、振込手数料の扱いといったルールも、一覧にして渡します。

月次の締めが遅れる:証憑が届かない

証憑が委託先に届くのが遅れると、処理も遅れます。月次の締めの期限から逆算して、社内での証憑の提出期限を決めます。期限に間に合わなかった証憑を翌月に回すのか、締めを待つのかも、あらかじめ決めておきます。

社内にノウハウが残らない:属人化が社外に移る

委託先の担当者だけが手順を知っている状態では、委託先を替えるときや社内に戻すときに、手順を一から作り直すことになります。手順書と判断の基準は委託先と共有し、自社でも保管します。契約が終わるときに受け取るもの(仕訳のデータ、手順書、取引先ごとのルール)も契約で決めておきます。手順書の書き方は、手順書の作り方とテンプレート、業務マニュアルとの違いと更新の方法で解説しています。

任せる範囲の思い違い:申告や手続きは別

経理をまとめて任せたつもりでも、申告や社会保険の手続きは経理代行の範囲に入っていないことがあります。前の節の4つの区分に沿って、作業ごとに担当を表にしておくと、抜けに気づけます。

経理代行を始める前の準備

経理代行を始めるまでの流れを図にまとめます。準備では、業務の切り分け、証憑の受け渡し、権限、締め日の4つを決めます。

経理代行を始めるまでの流れ
図の要点をテキストで読む

経理代行を始めるまでの5つの段階。1は業務の棚卸しで、毎日・毎月・毎年の作業を頻度ごとに書き出す。2は範囲を分ける段階で、任せる作業、社内の判断、税理士や社会保険労務士などの専門家の業務に分ける。3は受け渡しで、紙とデータの証憑の経路と保存場所を決める。4は権限の設定で、作業に必要な範囲だけを渡し、振込の承認は社内に残す。5は並行での確認で、社内と委託先で結果を比べてから切り替える。手順書、判断の基準、取引先ごとのルールは自社にも残す。

業務の切り分け:毎月と毎年の作業を書き出す

まず、今の経理の作業を、毎日、毎月、毎年に分けて書き出します。作業ごとに、使うツール、期限、関係者、判断が必要な場面を並べ、任せる作業、社内に残す判断、専門家に依頼する業務に分けます。手順書がない作業は、委託先に渡す前に棚卸しが必要です。

証憑の受け渡し:紙とデータの経路を決める

紙の領収書、PDFの請求書、メールで届く請求書など、証憑ごとに、誰がどこに置き、委託先がいつ取りに行くかを決めます。共有のフォルダやクラウドのサービスに集める場合は、ファイルの名前の付け方もそろえておきます。電子データで受け取った請求書などは、次の節で説明するとおり、電子データのまま保存します。

権限:作業に必要な範囲だけを渡す

会計ソフトは、委託先の担当者ごとにアカウントを発行し、作業に必要な権限だけを付けます。ネットバンキングは、委託先の作業を振込データの作成までとし、承認と実行は社内に残します。契約が終わったときにアカウントを止める手順も決めておきます。

給与計算を任せると、従業員の氏名や給与の情報を個人データとして委託先に渡すことになります。個人情報保護法第25条は、個人データの取扱いを委託する場合に、委託先を監督する義務を委託元に課しています。個人情報保護委員会のガイドライン(通則編)は、業務に必要のない個人データを提供しないことを前提に、適切な委託先の選定、委託契約の締結、委託先での取扱状況の把握を求めています。

締め日と期限:月次と年次のカレンダーを作る

月次の締め、請求書の発行日、支払日、給与の支払日を並べ、委託先の作業の期限を決めます。決算や年末調整のような年に一度の作業は、忘れやすいため年間のカレンダーにしておきます。始めてからしばらくは、社内の担当者と委託先が同じ作業を並行して行い、結果を突き合わせてから切り替えると、誤りに気づきやすくなります。

想定例:一人経理の会社が記帳と請求、支払いの準備を任せる場合

以下は説明のための架空の例です。従業員20名の会社で、経理を1人で担当していた社員が退職することになり、後任が決まるまで経理代行を使うとします。

会社は、記帳、請求書の発行と入金の確認、支払予定の一覧と振込データの作成を経理代行の会社に任せます。総務の社員が毎週、紙の領収書をスキャンして共有フォルダに置き、メールで届いた請求書もPDFのまま同じフォルダに保存します。振込データの承認と実行は社長が行い、決算と申告は顧問の税理士に依頼します。退職する社員には、取引先ごとのルールと、例外のときにどう対応してきたかを書き出してもらい、委託先と会社の両方で保管します。

電子帳簿保存法とインボイス制度で確かめること

経理代行を使っても、帳簿や書類を保存する義務を負うのは、法人や個人事業者自身です。国税庁の説明では、国税に関する法律の規定によって帳簿や書類を保存しなければならない者を「保存義務者」としています。委託先の作業がこれらの制度に沿っているかを、契約の前に確かめます。

電子取引のデータは電子のまま保存する

国税庁は、請求書、領収書、契約書、見積書などに関する電子データを送付・受領した場合には、そのデータを一定の要件を満たした形で保存する必要があるとしています。メールに添付されたPDFや、Webサイトからダウンロードした請求書も電子取引にあたります。要件は、改ざんを防ぐ措置(タイムスタンプ、訂正や削除の履歴が残るシステム、事務処理規程のいずれか)、確認するためのディスプレイやプリンタの備付け、「日付・金額・取引先」で検索できることです。基準期間の売上高が5,000万円以下の事業者などは、税務調査などの際にデータのダウンロードの求めに応じられるようにしていれば、検索の要件は不要とされています。

経理代行に任せる場合は、電子データをどこに保存し、委託先の作業でデータを印刷して紙だけを残す運用になっていないかを確かめます。紙で受け取った書類をスキャンして保存する「スキャナ保存」は希望する事業者が選べる制度で、使う場合は別の要件があります。

インボイスの確認と、2026年10月からの経過措置の変更

消費税の仕入税額控除を受けるには、原則として、売手であるインボイス発行事業者から交付を受けたインボイスを保存する必要があります。国税庁は、インボイスの記載事項として、交付先の名称、売手の名称と登録番号、取引年月日、取引内容、税率ごとの対価の額と適用税率、税率ごとの消費税額等を挙げています。経理代行に請求書の確認を任せる場合は、登録番号や記載事項を確かめる手順を含めるかを決めます。

免税事業者などからの仕入れについては、インボイスがなくても一定の割合を控除できる経過措置があります。国税庁の案内(令和8年9月)によると、この割合は2026年(令和8年)10月1日から80%から70%に変わり、2028年10月1日から50%、2030年10月1日から30%となり、2031年10月1日からは控除できなくなります。仕入先がインボイス発行事業者かどうかで記帳の区分が変わるため、区分の付け方を委託先と顧問の税理士の間でそろえておきます。どの方法で消費税を計算するかの判断は、税理士に相談する内容です。

AIで変わる経理代行の作業

経理の作業のうち、書類の読み取りと仕訳の下書きは、AIで扱いやすい工程です。請求書や領収書から日付、金額、取引先を読み取り、過去の仕訳をもとに勘定科目の候補を付けた下書きを作るといった処理が当てはまります。経理代行の会社がAIを使う場合は、AIの下書きを委託先の担当者が確認し、判断が必要なものを依頼元に戻す形になります。AIと人の分担の考え方は、AIエージェントに任せる仕事、人が確認する仕事の分け方で解説しています。

制度の側でも、データの連携を前提にした仕組みが整えられています。国税庁は、請求書などの電子取引データを自動で保存し、帳簿に自動で連携する仕組みを「デジタルシームレス保存」と呼び、要件を満たして届け出た場合の優遇措置を設けています。請求書をデータで受け取り、そのまま帳簿に連携できる取引が増えれば、紙の証憑を人が読み取って入力する作業はそのぶん少なくなります。

ただし、AIの読み取りや科目の候補は、確定した結果ではありません。誰がどの基準で確認するのか、誤りが見つかったときに誰が直すのか、AIで処理するデータがどこに保存されるのかを、委託の前に確かめます。AIを使う委託の確かめ方は、Q&A「品質管理はAI×BPOでどう担保しますか?」も参考にしてください。

経理の引継ぎと、inovieの引継ぎ代行プラス

経理代行を始めるときや、経理の担当者が替わるときにつまずきやすいのは、今の担当者しか知らない手順と判断の基準を、委託先や後任に渡すことです。

inovieが運営する引継ぎ代行プラスは、社員が退職するときや産休・育休で休むときに、会社に代わって業務の引継ぎを受け、後任の方が決まるまでリモートで業務を代行するサービスです。経理と給与計算については、日々の処理の代行は行わず、引継ぎに絞っています。辞める方から経理の手順と判断の基準を聞き取り、マニュアル、動画マニュアル、引継ぎAIにまとめて、日々の業務を回す方(社内の方、顧問の税理士の方、経理代行の会社)にお渡しします。経理代行の会社に業務を渡すときの資料として使えるため、社内に経理の知識を残したまま外部に任せられます。

inovieでは、業務の整理から既存システムへのAIの組み込みまでを支援するAI導入・システム開発の支援も行っています。サービスの一覧はサービスをご覧ください。経理のどこまでを外部に任せるか、引継ぎをどう進めるかのご相談は、お問い合わせから受け付けています。

出典確認日:2026-10-06

この記事をシェアする

← ブログ一覧に戻る記事の先頭へ ↑