手順書の作り方とテンプレート、業務マニュアルとの違いと更新の方法

手順書は、1つの作業を、誰が行っても同じ結果になるように順番に書いた文書です。業務マニュアルは、その作業を含む業務全体の目的や流れ、担当、ルールをまとめた文書で、手順書は業務マニュアルの一部として位置づけられます。実際に読まれる手順書にするには、手順だけでなく、作業の目的、前提、判断の基準、例外の対応、更新日と担当を書いておくことが大切です。この記事では、手順書と業務マニュアルの違いを整理したうえで、手順書に書く項目とコピーして使えるテンプレート、作り方、動画マニュアルとの使い分け、更新を続けるためのルール、AIを使うときに人が確かめることを解説します。
手順書と業務マニュアルの違い
手順書と業務マニュアルは、社内で同じ意味に使われることも多い言葉です。会社によって呼び方は違いますが、この記事では、扱う範囲で次のように分けます。
- 手順書:受注の入力、請求書の発行、月次レポートの作成のように、1つの作業を始めから終わりまで順に書いた文書です。読む人は、いまその作業をする担当者です。
- 業務マニュアル:受発注、経理、総務のように、複数の作業からなる業務全体をまとめた文書です。業務の目的、全体の流れ、担当と関係者、月間・年間の予定、使うツールと保存場所、ルールを書き、個々の作業は手順書を参照する形にします。読む人は、担当者に加えて、新しく配属された人や業務を管理する人です。
業務マニュアルの目次の例を挙げます。
- 業務の目的と、成果物を渡す相手
- 全体の流れ(どの作業がどの順で起きるか)
- 担当と関係者、問い合わせ先
- 毎日・毎週・月末・年1回の予定
- 使うツール、ファイルの保存場所、権限
- 業務のルール(締め日、承認が必要な条件など)
- 手順書の一覧(作業ごとのリンク)
業務マニュアルより先に、よく使う作業の手順書から作る
業務マニュアルを最初から全部書こうとすると、書く量が多く、途中で止まりがちです。先に、頻度が高い作業、ミスが起きやすい作業、1人しかやり方を知らない作業の手順書を作り、業務マニュアルは手順書の一覧と全体の流れをまとめる形で後から整えると進めやすくなります。手順書がそろうと、誰がやっても同じ手順と基準で作業できる状態、つまり業務の標準化にも近づきます。
読まれる手順書に書く7つの項目
作業の順番だけを並べた手順書は、いつもどおりに進む日には使えても、少し違う状況になると役に立ちません。読む人が迷いやすいのは、手順どおりに進まない場面です。手順書には、次の7つの項目を書きます。
図の要点をテキストで読む
手順書に書く項目と、その記入例をまとめた表。記入例はFAXで届いた注文の受注入力。目的と対象には、作るものと渡す相手、扱う範囲を書く。例は、当日中に受注を登録し出荷担当へ渡す、EDIの注文は対象外。前提には、使うシステム、保存場所、権限を書く。例は、受注システムの入力権限と共有フォルダの注文書。手順には、1つの番号に1つの操作と、確かめることを書く。例は、品番を入力し在庫の表示を確かめる。判断の基準と例外には、迷う場面の基準と連絡先を書く。例は、単価がマスタと違う注文は課長へ確認。更新日と担当には、最終更新日、更新の担当、変更内容を書く。例は、受注担当が半年ごとに見直す。
目的:この作業で何を作り、誰に渡すか
最初に、作業の成果物と渡す相手、期限を書きます。目的がわかると、手順どおりに進まないときに、読む人が何を優先すればよいかを判断できます。
対象:どの範囲の作業か
その手順書が扱う範囲を書きます。「EDIで届く注文は含まない」「海外の取引先は別の手順書」のように、対象外のものも書いておくと、違う手順書を使ってしまうことを防げます。
前提:使うもの、必要な権限、事前に終わっている作業
使うシステムとファイルの保存場所、必要なログイン権限、この作業の前に終わっているはずの作業を書きます。前提が書かれていないと、新しい担当者は最初の手順で止まります。
手順:1つの手順に1つの操作
手順は番号を付け、1つの番号には1つの操作だけを書きます。画面名やボタン名は、実際の画面に表示されているとおりに書きます。操作のあとに確かめること(「登録完了と表示される」など)を添えると、読む人が正しく進んでいるかを確かめられます。画面のスクリーンショットは、操作する箇所に印を付けて、その手順のすぐ下に置きます。
判断の基準:迷う場面で何を見て決めるか
「単価がマスタと違う場合」「納期に間に合わない場合」のように、作業の途中で判断が必要になる場面と、その基準を書きます。基準は、金額や日数など、読む人が同じように判断できる形で書きます。基準を決めるのは業務の責任者です。担当者の頭の中にしかない基準は、聞き取って書き出し、責任者が確かめてから載せます。
例外:いつもと違うときの対応と連絡先
システムが動かないとき、書類が読めないとき、取引先から通常と違う依頼が来たときの対応を書きます。担当者が判断しない例外は、誰に、どの手段で連絡するかまで書きます。
更新日と担当:誰がいつ確かめた内容か
最後に、最終更新日、更新の担当者、変更の内容を書きます。更新日がない手順書は、読む人が内容をいまも信じてよいのかを判断できません。
コピーして使える手順書のテンプレート
7つの項目を、そのまま使える表の形にしました。社内の文書ツールやスプレッドシートに貼り付け、【 】の中を書き換えて使ってください。
項目 | 記入する内容 |
|---|---|
作業名 | 【例:FAXで届いた注文の受注入力】 |
目的 | 【この作業で何を作り、誰に、いつまでに渡すか】 |
対象 | 【扱う範囲と、扱わないもの】 |
頻度・時期 | 【毎日、毎週、月末、年1回など】 |
前提 | 【使うシステムとファイルの保存場所、必要な権限、先に終わっている作業】 |
判断の基準 | 【迷う場面と、その場面で見るもの、決め方】 |
例外の対応 | 【いつもと違うときの対応と、連絡する相手・手段】 |
関連する資料 | 【動画マニュアル、別の手順書、取引先ごとの約束ごと】 |
更新日・担当 | 【最終更新日、更新した人、変更した内容】 |
手順の部分は、次の表に1行ずつ書きます。
番号 | 操作 | 画面・ボタン | 確かめること |
|---|---|---|---|
1 | 【1つの操作】 | 【画面名、ボタン名】 | 【操作のあとに表示されるもの】 |
2 | 【1つの操作】 | 【画面名、ボタン名】 | 【操作のあとに表示されるもの】 |
業務マニュアルのテンプレートとして使う場合は、前の章の目次の例を見出しにし、作業ごとにこの手順書へのリンクを並べます。
手順書の作り方:作業を選んでから公開・見直しまで
手順書は、机の上で思い出しながら書くより、実際の作業を見ながら書く方が抜けが少なくなります。次の流れで進めます。
図の要点をテキストで読む
手順書を作って更新し続けるまでの6つの手順。1は作業を選ぶで、頻度が高い作業、ミスが起きやすい作業、1人しか知らない作業から選ぶ。2は作業を記録するで、ふだんの担当者の作業を録画し、判断の基準を聞く。3は下書きを作るで、録画の文字起こしからAIで作った下書きも使いながら、テンプレートの項目を埋める。4は別の人が試すで、作業したことがない人が手順書だけで作業し、迷った箇所を書き足す。5は公開するで、保存場所を1か所に決め、業務マニュアルから開けるようにする。6は見直すで、決めた時期と、システムやルールの変更時に更新し、履歴を残す。更新の担当者を手順書ごとに1人決める。
作業を選び、ふだん担当している人の作業を記録する
最初に、手順書にする作業を選びます。前の章で挙げたとおり、頻度が高い作業、ミスが起きやすい作業、1人しかやり方を知らない作業から選びます。
次に、ふだん担当している人に実際に作業してもらい、画面を録画するか、横で見ながらメモを取ります。作業をしながら「ここで何を見て決めていますか」と聞くと、判断の基準が言葉になります。本人にとって当たり前の確認は、聞かなければ手順書に残りません。
下書きを作り、別の人が手順書だけを見て作業する
記録をもとに、テンプレートの項目を埋めて下書きを作ります。下書きができたら、その作業をしたことがない人に、手順書だけを見て実際に作業してもらいます。手順書を書いた人は横で見るだけにして、読んだ人が迷った箇所、聞き返した箇所を手順書に書き足します。この試行を省くと、書いた人にしかわからない前提が残ったままになります。
保存場所を決めて公開し、更新の担当を決める
手順書は、決めた1か所に保存し、業務マニュアルの手順書一覧から開けるようにします。個人のフォルダやメールの添付で配ると、古い版が残り、どれが最新かわからなくなります。公開するときに、次の章で書く更新の担当と見直しの時期も決めておきます。
動画マニュアルと文章の手順書の使い分け
画面の操作が多い作業は、文章で説明するより、操作している様子を録画した動画の方が早く伝わります。一方で、判断の基準や例外の対応、後から探して読み返す情報は、文章の方が向いています。
向いている内容 | 動画マニュアル | 文章の手順書 |
|---|---|---|
画面上の操作の位置や順番 | 向いている | 補助的に使う |
判断の基準、例外の対応 | 向いていない | 向いている |
必要な箇所を探して読む | 探しにくい | 探しやすい |
画面や手順の変更への対応 | 撮り直しが必要 | 該当箇所だけ直せる |
両方を作る場合は、文章の手順書を基本にし、画面の操作が多い手順に動画を添える形にすると、更新の手間を抑えられます。動画は業務ごと、手順のまとまりごとに短く区切り、手順書の該当する手順からリンクします。1本の長い動画にすると、必要な箇所を探すのに時間がかかり、画面が変わったときに全体を撮り直すことになります。
画面の録画は、パソコンに入っている機能でも行えます。Windowsでは、Snipping Toolで「Windowsロゴキー + Shift + R」を押すと、動画を録画するための画面が開き、録画したい領域を選んで録画できます。Macでは、「shift + command + 5」でスクリーンショットアプリを開き、画面全体や選択した部分を収録できます。録画する前に、顧客名や個人情報が映らないように、テスト用のデータを使うか、映った部分を編集で隠せるかを確かめておきます。
手順書を古くしないための更新のルール
手順書は、作った時点では正しくても、システムの画面や取引先の条件が変わると、少しずつ実際の作業と合わなくなります。古いままの手順書は、読む人に実際と違う手順で作業させるおそれがあります。作るときに、次の3つを決めておきます。
更新の担当を1人決める
手順書ごとに、更新の担当者を1人決めます。担当者は、その作業をふだん行っている人の中から選びます。全員で更新する決まりにすると、誰も更新しない状態になりやすいためです。担当者が異動や退職をするときは、手順書の更新担当も引き継ぎます。
見直しの時期と、更新のきっかけを決める
定期的な見直しの時期を、半年に1回、年度の始めなど、手順書ごとに決めます。あわせて、次のような変更があったときは、時期を待たずに更新します。
- 使っているシステムの画面や操作が変わったとき
- 取引先との約束ごとや社内のルールが変わったとき
- 手順書どおりに作業してミスや問い合わせが起きたとき
- 新しい担当者が手順書を読んで迷ったとき
更新の履歴を残す
更新するたびに、更新日、更新した人、変更した内容を手順書の末尾に書き足します。履歴があると、ミスが起きたときに、その時点の手順書がどうなっていたかを確かめられます。古い版を別のファイルとして残すと最新版がわかりにくくなるため、ファイルは1つにして、履歴で変更を追える形にします。
AIで手順書を作るときに任せること、人が確かめること
手順書づくりのうち、記録を文章に起こす作業や、資料から情報を拾い出す作業は、生成AIで下書きを作れます。生成AIを社内で使うときのルールづくりは、ChatGPTが社内で定着しない理由と、業務に組み込む進め方で解説しています。
AIに任せられること:下書きと、探しやすくする作業
AIに任せやすいのは、次のような作業です。
- 録画や会議の記録から手順の下書きを作る:作業を説明しながら録画した音声や、引継ぎの打ち合わせの文字起こしを渡し、テンプレートの項目に沿って手順の下書きを作ります。
- 過去のメールや問い合わせ履歴から、判断の基準や例外の候補を拾う:「納期の変更」「単価の相談」などの過去のやり取りから、担当者がどう対応していたかを一覧にします。拾い出したものは候補として扱います。
- 手順書を探せるようにする:手順書と動画マニュアルをまとめてAIに読み込ませ、社内の質問に答えられるようにします。答えに、もとになった手順書の箇所を示す形にすると、読む人が原文を確かめられます。
人が確かめること:基準・例外・実際に作業できるか
AIの下書きには、実際の画面と違うボタン名や、元の資料にない条件が混ざることがあります。下書きをそのまま公開せず、次の点を人が確かめます。
- 判断の基準の金額や日数が、業務の責任者が決めたものと合っているか
- 例外の対応と連絡先が、いまの社内の体制と合っているか
- 手順書だけを見て、別の人が実際に作業できるか
- 個人情報や取引先の情報を、決めたルールの範囲でAIに渡しているか
想定例:月末の請求書発行の手順書をAIで下書きする場合
以下は説明のための架空の例です。月末の請求書の発行を1人で担当している社員が、作業を説明しながら画面を録画しました。総務の担当者は、録画の文字起こしと、過去3か月分の取引先とのメールをAIに渡し、テンプレートに沿って手順書の下書きを作りました。
下書きを担当者本人が読むと、締め日を過ぎた注文の扱いが抜けていました。また、値引きの条件がメールの文面から推測で書かれていたため、課長に確かめて基準を書き直しました。そのうえで、経理の別の社員が手順書だけを見て翌月の請求書を発行し、迷った2か所を書き足してから公開しました。更新の担当は、請求書の発行を担当する社員に決めています。
退職・休職の前に手順書を残すとき
担当者の退職や休職が決まってから手順書を作る場合は、使える日数が限られます。業務一覧を作って優先順位を決め、頻度が高い作業と判断が必要な作業から手順書と動画に残します。最終出社日までの進め方は、退職が決まったら引継ぎはどう進める?で解説しています。引継ぎの資料として何を渡すかは、Q&A「AI×BPO運用のナレッジ移転は、何を渡すべきですか?」でも整理しています。
社内に手順書を作る時間や、作業を受ける人がいない場合は、外部に任せる方法もあります。inovieが運営する引継ぎ代行プラスは、社員が辞める・休むときに、会社に代わって業務の引継ぎを受け、後任の方が決まるまでリモートで業務を回すサービスです。辞める方とのオンラインの引継ぎと、資料・メールの読み込みから、判断の基準も含めた業務ごとの手順書(マニュアル)、画面操作を業務ごとに短く区切った動画マニュアル、マニュアルと動画をもとに質問に答える引継ぎAIを作ります。作ったマニュアルで業務を回しながら、入力や受発注などの定型業務の仕組み化も進めます。委託した業務の中でAIと人がどう分担するかは、AI×BPOとは?従来のBPOとの違いと向く業務、委託前の確認項目で解説しています。inovieのサービスの全体はサービス一覧でご覧いただけます。
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出典確認日:2026-10-06
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