BPOとは?意味と業務の例、派遣・アウトソーシングとの違いと選び方

BPOとは、ビジネスプロセスアウトソーシング(Business Process Outsourcing)の略で、社内で行ってきた業務を、個別の作業ではなく業務の流れごと外部の事業者に任せる委託の形です。委託先が手順を決めて担当者を配置し、依頼する会社は結果を受け取って確認します。この記事では、BPOの意味と対象になる業務の例、アウトソーシング・人材派遣・BPaaSとの違い、メリットとデメリット、委託先の選び方と進め方を順に整理します。
BPOとは:業務の流れをまとめて外部に任せる委託の形
BPOは「ビーピーオー」と読みます。経理、受発注、問い合わせ対応のような業務を、受け付けから処理、確認、報告までの一続きの流れとして外部の事業者に任せることを指します。
BPOには、法令で定められた定義はありません。調査会社の矢野経済研究所は、2025年11月に公表したBPO市場の調査で、BPOを、システム運用管理業務、コールセンター系業務、間接部門系業務、直接部門系業務などを、発注企業から委託を受けて代行するサービスと定義しています。税務、物流、情報システムの開発、ビルメンテナンスのように、以前から外部への委託が一般的なサービスは対象から外しています。また、システム運用管理の委託をIT系BPO、それ以外の業務の委託を非IT系BPOと分けています。
同じ調査によると、2024年度の国内BPO市場は、事業者売上高ベースで5兆786億5,000万円と推計され、前年度から4.0%増えました。内訳は、IT系BPOが3兆1,220億円、非IT系BPOが1兆9,566億5,000万円です。調査は、利用する企業が大手企業から中堅・中小企業へ広がっていることも挙げています。なお、同社の次の版のレポートは2026年11月末に発刊される予定で、この記事では確認日時点で最新の2025年の調査を使っています。
BPOが検討される背景の一つに、人手不足があります。厚生労働省の「令和8年版 労働経済の分析」は、2025年は全産業で企業の人手不足感が高止まりしており、企業規模別では、特に中堅企業と中小企業で人手不足感が強まったと分析しています。採用で人を増やしにくい業務を流れごと外に任せる方法として、BPOが選択肢に入ります。
BPOの対象になる業務の例
BPOの対象になる業務は、矢野経済研究所の区分に沿うと、次の4つに分けて考えられます。
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BPOの対象になる業務の例を、矢野経済研究所のBPO市場調査の区分に沿って4つに分けた図。間接部門系は経理、人事、総務の業務で、請求書の受領と照合、給与計算と勤怠の集計、備品や契約書の台帳管理などがある。直接部門系は営業事務や購買の業務で、受注入力や見積書・発注書の作成、出荷の手配と納期の回答、購買・調達の事務がある。コールセンター系は問い合わせの一次対応、注文や予約の受け付け、対応記録の整理。システム運用管理は監視とヘルプデスク、アカウントの発行と削除などで、IT系BPOとして分けて集計される。共通して、手順を書き出せて結果を後から確かめられる業務が任せやすい。
間接部門の業務:経理、人事、総務
経理では、請求書の受領と照合、支払データの作成、経費精算の確認、記帳などが対象になります。人事では、給与計算、勤怠の集計、入社や退職の手続き、福利厚生の事務があります。総務では、備品や契約書の台帳の管理、社内からの定型の問い合わせへの対応などが当てはまります。経理を外に任せるときに何を任せて何を社内に残すかは、経理代行とは?経理アウトソーシングで任せられる業務と注意点で詳しく解説しています。
直接部門の業務:営業事務、受発注、購買
売上や仕入れに直接かかわる部門の業務も対象になります。受注データの入力、見積書や発注書の作成、出荷の手配、納期の回答、購買や調達の事務などです。取引先ごとの条件が多い業務では、判断の基準をどこまで渡せるかが委託の範囲を左右します。
コールセンター、カスタマーサポート
電話やメール、チャットでの問い合わせへの一次対応、注文や予約の受け付け、対応記録の整理などです。FAQや回答の基準が整っているほど、委託先に任せやすくなります。
システムの運用管理
サーバーやネットワークの監視、ヘルプデスク、アカウントの発行や削除のような、システムを動かし続けるための業務です。矢野経済研究所の調査では、IT系BPOとして非IT系とは分けて集計されています。
BPOとアウトソーシング、人材派遣、BPaaSの違い
BPOと混同されやすい言葉に、アウトソーシング、人材派遣、BPaaSがあります。違いは、何を任せるのか、誰が担当者に指示を出すのか、自社に何が残るのかで比べるとわかりやすくなります。
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BPO、作業単位のアウトソーシング、人材派遣、BPaaSの比較表。BPOは業務の流れをまとめて任せる形で、指示は委託先が自社の担当者に出し、依頼する会社には要件の提示と判断・承認、結果の確認が残る。作業単位のアウトソーシングは、入力や発送などの作業を切り出して任せ、作業の指示は委託先が出すが、前後の工程と全体の管理は自社に残る。人材派遣は働く人を受け入れる形で、指示は受け入れた自社が出し、仕事を教えて割り振るのも自社(労働者派遣法第2条)。BPaaSは委託先のクラウドの仕組みと運用をまとめて使う形で、処理と指示は委託先が行い、利用する会社はサービスの標準の手順に合わせ、承認と確認を担う。どの形かは契約の名前ではなく、指示の実態で判断される。
アウトソーシングとの違い:BPOは業務の流れごと任せる
アウトソーシングは、自社の業務を外部の事業者に任せること全般を指す広い言葉です。データ入力だけ、書類の発送だけのように、作業の一部を切り出して任せる場合もアウトソーシングに含まれます。BPOはその中で、業務の流れをまとめて任せる形を指します。委託先が業務全体の手順を持ち、品質や期限まで含めて請け負う点が、作業単位の委託との違いです。アウトソーシング全般の意味や業務委託(請負・準委任)との関係は、アウトソーシングとは?派遣・業務委託・BPOとの違いと任せ方で整理しています。
人材派遣との違い:指示を出すのが自社か委託先か
労働者派遣法は、労働者派遣を「自己の雇用する労働者を、当該雇用関係の下に、かつ、他人の指揮命令を受けて、当該他人のために労働に従事させること」と定めています(第2条)。派遣では、働く人を受け入れた自社が仕事を教え、日々の作業を指示します。
BPOでは、委託先が自ら雇う担当者に指示を出し、業務の進め方を管理します。依頼する会社が示すのは、どの業務をどの基準で仕上げてほしいかという要件です。委託先の担当者に直接作業の指示を出し続けると、契約の名前が業務委託であっても、実態は労働者派遣と判断されるおそれがあります(いわゆる偽装請負)。厚生労働省は、派遣と請負の区分を契約の形式ではなく実態で判断するとしています。判断の基準と具体例は、アウトソーシングとは?の「契約の名前ではなく、指示の実態で判断される」で詳しく解説しています。
BPaaSとの違い:委託先の仕組みと標準の手順に合わせるか
BPaaS(Business Process as a Service)は、委託先が用意したクラウドのシステムと、その上での処理をまとめて利用する形です。従来のBPOでは、委託先が依頼する会社の手順やシステムに合わせて業務を引き受けるのが一般的です。BPaaSでは、委託先の仕組みと標準の手順が先にあり、利用する会社がそれに合わせます。立ち上げの手間を抑えやすい一方で、自社独自の手順が多い業務は合わせにくくなります。BPaaSの向き不向きは、BPaaSとは?BPOやSaaSとの違い、向く業務と導入前の確認項目で解説しています。
BPOのメリットとデメリット
BPOのメリットとデメリットは、どちらも業務の流れごと社外で回すことから生まれます。
メリット:人手不足への対応と、手順の整理
1つ目は、採用や育成をせずに業務を回せることです。担当者の退職や業務量の増加があっても、委託先の体制で対応できます。繁忙期と閑散期の差が大きい業務でも、委託の量で調整しやすくなります。
2つ目は、業務の手順が整理されることです。委託するには、業務の始まりと終わり、判断の基準、例外の扱いを書き出す必要があります。担当者の頭の中にしかなかったやり方が、委託の準備の段階で文書になります。
3つ目は、社員が自社でしかできない仕事に時間を使えることです。定型の業務を外に任せると、営業や企画、顧客との関係づくりに充てる時間が増えます。
デメリット:社内に業務がわかる人が残りにくい
1つ目は、業務のやり方が委託先に集まり、社内でその業務を説明できる人が減ることです。委託先を替えるときや業務を社内に戻すときに、手順を一から作り直すことになりかねません。
2つ目は、急な変更に対応しにくいことです。委託先の担当者に直接指示を出せないため、方針の変更や急ぎの依頼は窓口を通じて伝えます。委託範囲に書いていない作業は、追加の費用や調整が必要になります。
3つ目は、情報の管理と委託先の監督が必要になることです。個人データの取扱いを委託する場合、委託元は委託先を監督する義務を負います(個人情報保護法第25条)。個人情報保護委員会のガイドライン(通則編)は、適切な委託先の選定、委託契約の締結、委託先での取扱状況の把握を求め、再委託については、委託先から事前に報告を受けるか承認を行うなどして確かめることが望ましいとしています。
このほか、委託費がかかることと、委託先とのやり取りや結果の確認に社内の時間が要ることも見込んでおきます。業務量が少なく、手順が頻繁に変わる業務では、委託の準備と確認の手間が、委託で減る手間を上回ることもあります。
BPOの委託先の選び方と進め方
BPOは、任せる業務を書き出すところから始めます。委託先を探すのは、任せる範囲と委託範囲を決めた後です。進め方は次の6段階です。
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BPOを進める6つの段階。1は業務の棚卸しで、手順と例外、業務量を書き出す。2は任せる範囲を決め、契約や価格の判断、支払いは社内に残す。3は委託範囲を書き、品質の基準と例外を戻す条件を決める。4は委託先を選び、体制とデータの扱い、終了時の引継ぎを確かめる。5は並行して回し、社内と委託先の結果を突き合わせてから切り替える。6は運用と見直しで、報告で例外の件数と理由を確かめ、手順書を更新する。手順書、判断の基準、例外の記録は自社でも受け取っておく。
任せる業務と、社内に残す業務を分ける
まず、業務を一覧にして、手順と例外、業務量を書き出します。棚卸しの項目とフォーマットは、業務の棚卸しとは?書き出す項目とフォーマット、進め方と結果の使い方で解説しています。
BPOに向くのは、手順を書き出せて、結果を後から確かめられる業務です。一方で、契約の締結、価格や値引きの判断、支払いの実行、採用や評価のような、会社として責任を負う判断は社内に残します。BPOに出すか社内で回すかの考え方は、Q&A「BPO委託と内製オペレーション、どう使い分けますか?」でも整理しています。
委託範囲を書く
任せる業務が決まったら、委託範囲を文書にします。業務ごとに、次の項目を書き出します。
- 業務の始まりと終わり:何を受け取ってから、何を誰に渡したら完了か。
- 品質の基準:期限、件数の目安、許される誤りの範囲、確認の方法。
- 例外の扱い:委託先が判断してよい範囲と、依頼する会社に戻す条件。
- データと権限:渡すデータの範囲、システムの権限と期限、再委託の可否。
- 報告:処理件数に加えて、修正した件数や戻した件数とその理由。
- 終了時の引継ぎ:手順書や記録、データをどの形で受け取るか。
委託先を選ぶときに確かめること
委託先を比べるときは、料金のほかに次の点を確かめます。
- 業務を担う体制と、担当者が替わったときの引継ぎの方法。
- 委託先が作る手順書を、依頼する会社も受け取れるか。
- 品質の確認方法と、誤りが見つかったときの直し方と報告の流れ。
- データの保管場所、アクセスできる担当者の範囲、再委託の有無。
- 契約を終えるときに、手順書や記録、データを受け取れるか。
- AIやツールを使う場合、どの工程で使い、出力を誰がどの基準で確認するか。
移行と運用:並行して回し、報告で見直す
委託を始めるときは、社内の担当者と委託先が同じ業務を並行して回す期間を設け、結果を突き合わせてから切り替えます。切り替えた後は、定例の報告で例外の件数と内容を確かめ、判断の基準や手順書を更新していきます。手順書の書き方と更新の方法は、手順書の作り方とテンプレート、業務マニュアルとの違いと更新の方法で解説しています。
想定例:受発注の事務をBPOで任せる場合
以下は説明のための架空の例です。従業員数十名の卸売の会社で、受発注の事務を1人で担当していた社員が退職することになりました。後任の採用は退職日に間に合わない見込みです。
会社はまず、担当者と一緒に業務を書き出しました。FAXで届く注文書の入力、在庫の確認、出荷の手配、納期の回答、月末の売上の集計です。このうち、注文書の入力から出荷の手配までと月末の集計を委託先に任せ、取引先ごとの値引きの判断と、新しい取引先との条件の決定は社内に残すことにしました。
委託範囲には、品番が見当たらない注文や、いつもと違う数量の注文を会社に戻す条件を書きました。最初の2週間は担当者と委託先が並行して入力し、結果を突き合わせてから切り替えています。月次の報告では、会社に戻した件数と理由を受け取り、判断の基準を足していきます。
AIで変わるBPO:AI×BPOという形
矢野経済研究所の調査は、人を介した業務とデジタル技術を組み合わせた「デジタルBPO」が提供されるようになっていることや、生成AIを活用したBPOサービスの実用化に向けた動きが活発になっていることを挙げています。
AIを使うBPOでは、注文書や請求書の読み取り、入力の下書き、マスタとの照合のような工程をAIが行い、人が確認と例外への対応を担う形が考えられます。AIに処理させるには、どの項目をどこから読み、どの条件で人に回すかを決めて文書にする必要があるため、手順と判断の基準が残りやすくなります。
一方で、依頼する会社が確かめることも増えます。委託先がどの工程でAIを使うのか、AIの出力を誰がどの基準で確認するのか、入力したデータがAIサービスの側でどう扱われるのかを、契約の前に確かめておきます。AIと人の分担の考え方や、委託する前の確認項目は、AI×BPOとは?従来のBPOとの違いと向く業務、委託前の確認項目で詳しく解説しています。
退職や休業で空いた業務を任せる:inovieの引継ぎ代行プラス
inovieは、AI×BPOの一つの形として引継ぎ代行プラスを運営しています。社員が退職するときや産休・育休で休むときに、会社に代わって業務の引継ぎを受け、後任の方が決まるまでリモートで業務を代行するサービスです。人を送って社内の方が指示を出す派遣とは異なり、業務そのものを預かり、すべてリモートで回します。
引継ぎでは、業務ごとの手順書、画面操作を録画した動画マニュアル、マニュアルと動画をもとに質問に答える引継ぎAIを作り、それを使って業務を回します。受注入力や発注書の作成、問い合わせの一次対応、データ入力などの定型業務が中心で、業務を回しながら、書類の読み取りや入力の下書きにAIを使うなどして仕組み化していきます。契約の締結や価格の判断、支払いの実行は会社に残し、経理と給与計算は日々の処理ではなく引継ぎまでを担当します。権限は必要なものだけを期限付きで預かり、秘密保持契約を結びます。
inovieのサービスの一覧はサービスをご覧ください。どの業務をBPOで任せ、どの業務を社内に残すかのご相談は、お問い合わせから受け付けています。
出典確認日:2026-10-07
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