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AI×BPO・業務引継ぎ

属人化とは?起きる原因とリスク、業務の属人化を解消する手順

属人化とは?起きる原因とリスク、業務の属人化を解消する手順

属人化とは、業務の進め方や判断の基準が特定の担当者にしかわからず、その人がいないと業務が進まない状態を指します。ふだんは問題なく回っていても、担当者の退職や休職、急な休みをきっかけに業務が止まり、引継ぎに大きな手間がかかります。この記事では、属人化の意味と専門性との違い、属人化が起きる原因、放置したときのリスクを整理したうえで、属人化している業務の見つけ方と、手順書・動画・AIを使って解消する手順を解説します。AIに任せられることと、人が担い続けることの分け方にも触れます。

属人化とは:業務が特定の人にしかわからない状態

属人化は法律や規格で定められた用語ではなく、業務の担い方を表すことばとして使われています。この記事では、業務の手順、判断の基準、関係者とのやり取りの経緯などが特定の担当者の頭の中や手元にだけあり、ほかの人が代わりに進めたり、結果を確かめたりできない状態を属人化と呼びます。反対に、誰が担当しても同じ手順と基準で進められるように業務をそろえることを、業務の標準化と呼びます。

中小企業庁の「2025年版 中小企業白書」は、組織運営の透明性を高める取組の一つとして「業務の属人化・ブラックボックス化の防止」を取り上げています。白書が引用する帝国データバンクの調査(令和6年度)では、経営情報の従業員への共有と、業務の属人化・ブラックボックス化の防止には、それぞれ5〜6割の事業者が取り組んでいるという結果でした。従業員規模が大きい事業者ほど取り組んでいる傾向も示されています。

属人化と専門性の違い

特定の人にしかできない仕事が、すべて問題になるわけではありません。経験を積んだ担当者の技術や判断力は、会社にとって大切な専門性です。問題になるのは、その人がいなくなったときに、業務を続ける手立ても、結果を確かめる手立てもない場合です。

見分けるときは、次の3つを確かめます。

  • 担当者が1か月不在になったとき、業務を止めずに済む手立てがあるか
  • 判断の理由を、担当者が言葉や資料で説明できるか
  • 担当者の成果物を、ほかの人が見て正しいかどうか確かめられるか

3つとも満たしている業務は、専門性が高くても属人化しているとはいえません。高度な判断そのものは担当者に任せたままでも、手順や判断の基準、経緯の記録をほかの人が読める形にしておけば、不在のときの備えになります。

業務の属人化が起きる4つの原因

属人化は、担当者の性格や意欲だけで起きるものではありません。多くの場合、職場の仕組みが属人化を生みやすい形になっています。

忙しくて手順を残す時間がない

手順書を書いたり、後輩に教えたりする時間は、その日の業務が終わってからでないと取りにくいものです。人手が足りない職場ほど、担当者は目の前の処理を優先し、手順を残す作業は後回しになります。その結果、仕事を一番よく知っている人ほど、記録を残す時間がない状態が続きます。

暗黙知が言葉になっていない

長く同じ業務を担当していると、「この取引先は月末に注文が増える」「この金額を超えたら課長に確認する」といった判断を、意識せずに行うようになります。こうした経験から身についた知識は暗黙知と呼ばれ、本人も当たり前だと思っているため、書き出す対象として気づかれにくいのが特徴です。手順書があっても、例外のときの判断が抜けていると、結局は担当者に聞かないと進められません。

評価制度が教えることを評価していない

人事評価が個人の処理件数や売上だけで決まる場合、手順を整えたり、ほかの人に教えたりする時間は評価につながりません。むしろ、自分にしかできない仕事を持っていることが、社内での立場を保つ理由になることもあります。評価の項目に、手順書の整備や後任の育成が入っていないと、属人化を減らす行動は続きにくくなります。

ツールと保存先が人ごとに分かれている

ファイルを個人のパソコンに保存している、取引先とのやり取りが個人のメールやチャットにしか残っていない、業務ごとに担当者が自分で作った表計算ファイルを使っている、といった状態も属人化の原因です。担当者以外は、どこに何があるのかわかりません。クラウドサービスを個人の名義やアカウントで契約していると、退職後にログインできなくなることもあります。

属人化を放置したときのリスク

属人化の影響は、担当者がいる間は表に出にくく、いなくなったときにまとめて現れます。

退職・休職で業務が止まる

最も大きいリスクは、担当者の退職、休職、産休・育休、急な病気で業務が止まることです。2025年版 中小企業白書も、業務の属人化からの脱却が「業務を属人化した従業員の退職等によるノウハウの喪失、業務停滞等のリスク防止にもつながることが期待」できるとまとめています。月末の締めや年に一度の更新手続きのように、時期が来るまで表に出ない業務は、担当者がいなくなってから存在に気づくことがあります。

担当者によって品質がばらつく

手順や基準がそろっていないと、同じ業務でも担当者によって仕上がりが変わります。顧客への回答の内容や、見積の出し方が人によって違うと、取引先からの信頼にも影響します。担当が替わるたびに、取引先が前任者との違いに戸惑うこともあります。

誤りや不正に気づきにくい

1人の担当者が処理から確認まで終える業務では、ほかの人が中身を見る機会がありません。単純な入力の誤りが長く続いても気づけず、意図的な不正があっても見つけにくくなります。お金や在庫、契約に関わる業務ほど、処理する人と確かめる人を分けておくことが大切です。

引継ぎに時間と費用がかかる

属人化した業務を引き継ぐときは、まず何をしているのかを洗い出すところから始める必要があります。退職が決まってから最終出社日までの短い期間に、業務の把握、手順の記録、後任への説明をすべて行うのは負担が大きく、抜けも出やすくなります。後任の採用が間に合わず、同僚が兼務するあいだに情報がさらに抜けることもあります。退職時の引継ぎの進め方は、退職が決まったら引継ぎはどう進める?最終出社日までの手順と引継ぎ先で解説しています。

属人化している業務の見つけ方:棚卸しのチェック項目

属人化を減らす最初の作業は、どの業務が属人化しているかを見つけることです。部署ごとに、担当者が持っている業務を書き出し、次の項目に当てはまるものに印を付けます。

  • その業務の手順を説明できる人が、担当者のほかにいない
  • 手順書がない、または最後に更新したのがいつかわからない
  • 社内外から「〇〇さんに聞いてください」と言われることが多い
  • 担当者が休むと、その日の処理が翌日以降に回る
  • 1人で処理から確認まで終えていて、ほかの人が結果を見ていない
  • 資料やデータが、担当者個人のパソコンやアカウントにある
  • 月末、期末、年に一度など、決まった時期にだけ発生する作業がある
  • 例外のときの判断基準が、担当者の経験に頼っている

書き出すときは、担当者本人に聞くだけでなく、メールの送受信やカレンダー、共有フォルダの更新履歴も一緒に見ると、本人が意識していない業務も見つかります。当てはまる項目が多い業務ほど、優先して手を付けます。よく見られるサインと、そこから起きるリスク、最初の対策を表にまとめました。

属人化のサインと、起きるリスク、最初の対策
図の要点をテキストで読む

業務の属人化を見つけるサインと、放置したときに起きるリスク、最初に打つ対策をまとめた表。「あの人に聞いて」が続く業務は、担当者が不在の日に止まるため、受けた質問を記録してよくある問い合わせにまとめる。手順書がない、または古い業務は、担当が替わると品質がばらつくため、本人の作業を録画して手順書の下書きにする。1人で処理から確認まで終える業務は、誤りや不正に気づきにくいため、確認する人を別に置く。資料が個人のパソコンやアカウントにある業務は、退職後にデータを取り出せなくなるため、共有の保存先と会社の権限に移す。

2026年版 中小企業白書でも、設備投資の前に行う業務プロセス見直しの取組として、業務フローの可視化や業務分担の見直しと並んで「不要・重複・属人化業務の洗い出し」が挙げられています。

属人化を解消する5つの手順

属人化を解消するといっても、すべての業務を一度に標準化する必要はありません。棚卸しで見つけた業務のうち、止まったときの影響が大きいものから、次の5つの手順で進めます。

業務の属人化を解消する5つの手順
図の要点をテキストで読む

業務の属人化を解消する5つの手順。1は業務の棚卸しで、担当者ごとに業務、頻度、使うツール、判断の場面を書き出す。2は手順書と動画への記録で、作業を録画し、判断の基準も文章に残す。3は複数の担当者で回すことで、2人目が手順書を見ながら実際に処理する。4は定型部分の自動化で、入力や集計をAIとツールで行う。5は定期的な見直しで、担当の交代や手順の変更に合わせて手順書を更新する。最後に、例外の判断、承認、取引先との関係は人が担うことを示している。

1. 業務を棚卸しする

チェック項目で印を付けた業務について、業務の名前、頻度と時期、使うツールとファイルの保存先、社内外の関係者、判断が必要な場面を一覧にします。判断が必要な場面は、「何を見て」「どの基準で」「誰に確認して」決めているかまで聞き取ります。この一覧が、次の手順書づくりの目次になります。

2. 手順書と動画に残す

手順書には、作業の順番だけでなく、例外が起きたときの対応と判断の基準を書きます。画面の操作が多い業務は、担当者が実際に操作する様子を録画し、業務ごとに短く区切っておくと、文章だけの手順書より早く確かめられます。取引先ごとの約束ごとや、過去に起きたトラブルの経緯も、担当者しか知らないことが多い情報なので、あわせて残します。

担当者に一から手順書を書いてもらうと、通常の業務と両立できずに止まりがちです。担当者には説明と録画に協力してもらい、文書にする作業は別の人が受け持つと進めやすくなります。何を残すべきかは、Q&A「AI×BPO運用のナレッジ移転は、何を渡すべきですか?」でも整理しています。

3. 複数の担当者で回す

手順書ができたら、2人目の担当者が手順書を見ながら実際に処理し、元の担当者が横で確かめる期間をとります。2人目が迷った箇所は、その場で手順書に書き足します。手順書は、実際に別の人が使ってみるまで、抜けている前提に気づけないためです。

2026年版 中小企業白書は、多能工化・兼務化が「業務の属人化防止や業務量の平準化、業務の効率化に寄与すると考えられる」としています。白書が引用する帝国データバンクの調査(令和7年度)では、約半数の事業者が多能工化・兼務化に取り組んでいると回答し、取り組むうえで有効だった取組として、従業員スキルの可視化、業務マニュアルの作成・整備、研修・勉強会等の実施が上位に挙がりました。1つの業務を2人以上が担える状態にしておけば、担当者が休んでも業務は止まりません。

4. 定型の部分をツールやAIに置き換える

手順が文書になると、毎回同じ流れで処理している部分と、人が判断している部分を分けられるようになります。入力、転記、集計、定例のレポートのように手順が決まっている部分は、今使っているツールの自動化機能や、業務専用のツールに置き換えます。人が手で行う作業が減るほど、担当者の頭の中にしかない手順も減ります。

置き換えるのは、手順書で流れが確かめられた部分だけにします。手順がはっきりしないまま自動化すると、今度はその仕組みの中身を誰も説明できなくなり、別の形の属人化が起きるためです。

5. 定期的に見直す

手順書は、作った時点から古くなり始めます。担当の交代、取引先の変更、ツールの更新があったときに手順書を直すルールを決め、半年や1年などの間隔で、手順書のとおりに業務が回っているかを確かめます。更新した日と更新した人を記録しておくと、どの手順書が古いかを判断できます。ナレッジの鮮度の保ち方は、Q&A「ナレッジの鮮度(Freshness)は、どう管理すればよいですか?」も参考にしてください。

属人化の解消でAIが手伝えること、人が担うこと

2026年版 中小企業白書によると、省力化投資としてAIを活用している事業者に目的を聞いた調査では、「業務時間の節減」が8割を超えて最も多く、「人手不足の解消」「業務の属人化解消」が続きました。AIは、属人化を解消する作業のうち、時間のかかる部分を手伝えます。

AIが手伝えること:文書化の下書きと、問い合わせへの回答の検索

1つ目は、文書化の下書きです。担当者への聞き取りや、画面操作を録画したときの説明を文字に起こし、AIで手順書の形に整えると、ゼロから書くよりも早く下書きができます。下書きは担当者が読み、誤りや抜けを直してから確定します。

2つ目は、問い合わせへの回答の検索です。手順書や判断表、よくある問い合わせをまとめておき、AIが社内からの質問に対して該当する箇所を探して答える仕組みをつくると、「〇〇さんに聞いて」の回数を減らせます。答えのもとになった手順書の箇所を示すようにしておけば、聞いた人が自分で確かめられます。社内Wikiとこうした検索の使い分けは、Q&A「社内WikiとRAG(検索拡張生成)、使い分けはどう考えればよいですか?」で解説しています。

人が担うこと:判断の基準づくり、例外の判断、確認

AIが答えられるのは、手順書や判断表に書かれている範囲までです。判断の基準そのものを決めること、基準に当てはまらない例外を判断すること、取引先との関係を保つこと、AIの出力が正しいかを確かめることは、人が担います。価格や契約の判断、支払いの承認のように会社として責任を負う判断も同様です。AIに任せる範囲と人が確かめる範囲の分け方は、AIエージェントに任せる仕事、人が確認する仕事の分け方でも整理しています。

想定例:見積と工事の手配を1人が担当している場合

以下は説明のための架空の例です。従業員40名ほどの設備保守会社で、見積の作成と協力会社への工事の手配を、勤続15年の社員が1人で担当しているとします。単価の決め方や、協力会社ごとの得意な工事は、本人の経験に頼っていました。

総務の担当者は、まず本人と一緒に業務を棚卸しし、毎日の見積作成、週ごとの工事手配、年に一度の協力会社との単価の見直しに分けました。見積作成は、本人が画面を操作する様子を録画し、説明を文字に起こしてAIで手順書の下書きにしたうえで、本人が単価の判断基準を書き足します。その後、入社3年目の社員が手順書を見ながら見積を作り、本人が確かめる期間を2か月とりました。単価表から見積の下書きを作る作業は表計算ソフトの機能で自動化し、単価の例外と協力会社の選定は、引き続き本人と課長が判断します。手順書は、半年ごとに2人で見直すことにしました。

担当者の退職や休職が先に決まった場合

属人化の解消は、担当者がいるうちに少しずつ進めるのが理想です。ただ、実際には担当者の退職や休職が決まってから、属人化に気づくことも少なくありません。その場合は、最終出社日や休業に入る日までの限られた期間で、棚卸しと手順の記録を集中して進めることになります。社内に受け手がいなければ、外部に引継ぎを任せる方法もあります。業務の委託先がAIと人で業務を分担する形は、AI×BPOとは?従来のBPOとの違いと向く業務、委託前の確認項目で解説しています。

inovieが運営する引継ぎ代行プラスは、社員が辞める・休むときに、会社に代わって業務の引継ぎを受け、後任の方が決まるまでリモートで業務を回すサービスです。辞める方とのオンラインの引継ぎと資料の読み込みから、業務ごとの手順書(マニュアル)、画面操作を録画した動画マニュアル、マニュアルと動画をもとに質問に答える引継ぎAIをつくります。業務を回しながら、入力や受発注、集計、レポートといった定型業務を仕組み化し、後任の方が決まったら、慣れるまで(最長1か月)引継ぎを担当します。判断や承認、お金の扱いは会社の方が行います。サービスの一覧はinovieのサービスでもご覧いただけます。

属人化している業務の整理や、退職・休職に備えた引継ぎについてのご相談は、お問い合わせから受け付けています。

出典確認日:2026-10-06

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