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AI×BPO・業務引継ぎ

引き継ぎ書はどう作る?書く項目とテンプレート、後任による確認の方法

引き継ぎ書はどう作る?書く項目とテンプレート、後任による確認の方法

引き継ぎ書は、後任が前任者に聞かなくても業務を回せるかどうかを基準に作ります。手順だけを並べた資料では、例外が起きたときや取引先から相談を受けたときに、後任が判断できません。この記事では、引き継ぎ書(引継ぎ資料)に書く項目と、そのまま写して使えるテンプレート、項目ごとの書き方、操作動画とAIを使った作り方、後任が実際に使って確かめる方法を順に解説します。退職が決まってから最終出社日までの段取りや、後任がいないときの引継ぎ先の選び方は、退職が決まったら引継ぎはどう進める?で解説しています。

引き継ぎ書とは:後任が一人で業務を回すための資料

引き継ぎ書は、担当者が退職・異動・休職で業務を離れるときに、受け持っていた業務の内容、やり方、関係者、進行中の案件をまとめて後任に渡す資料です。社内では「引継ぎ資料」「業務引継書」とも呼ばれ、多くの場合は同じものを指します。この記事では、まとめて引き継ぎ書と呼びます。

口頭の説明だけで引き継ぐと、聞いた直後はわかったつもりでも、月末や年に一度の作業の時期に思い出せないことがあります。前任者が社内にいれば聞き直せますが、退職した後は確かめる相手がいません。引き継ぎ書は、前任者がいなくなった後も後任が読み返せるように、文書として残すものです。

引き継ぎ書と手順書の違い

手順書(マニュアル)は、1つの業務の操作を順番に書いた資料です。引き継ぎ書は、それより範囲が広く、担当していた業務の全体と、引き継ぐ時点の状況を伝えます。どの業務がいつあり、誰と関わり、どの案件が途中なのかは、手順書だけではわかりません。

そのため、引き継ぎ書は「全体をまとめる部分」と「業務ごとのページ」の2つに分けて作ると扱いやすくなります。全体の部分には業務一覧、時期、関係者、システム、進行中の案件を書き、業務ごとのページには手順と判断の基準を書きます。既に手順書がある業務は、業務ごとのページから手順書の保存場所を示せば足ります。

引き継ぎ書に書く項目とテンプレート

引き継ぎ書に書く項目は、次の表のとおりです。表計算ソフトや文書の1行目に項目名を並べ、右の列に書いていくと、そのままひな形として使えます。記入例は、受発注を担当する営業事務を想定した架空の例です。

項目

書く内容

記入例(架空)

基本情報

前任者、後任、引継ぎの期間、最終出社日、引継ぎ後の問い合わせ先

前任 山田、後任 佐藤、10月6日〜24日、問い合わせ先は営業課長

業務一覧

業務の名前、成果物と渡し先、頻度、所要時間、優先度

受注入力、受注システムへの登録、毎日、1日1時間、高

定期業務カレンダー

月次・四半期・年次の業務と、締め切りの日

毎月25日 請求書の発行、毎年3月 単価表の見直し

業務ごとの手順

開始のきっかけ、操作の順番、終わったことの確かめ方

FAXが届いたら受注システムに入力し、注文書に処理日を書く

判断基準と例外

いつもの判断のしかた、例外と対応、上長に確認する条件

在庫が足りない注文は、営業担当に連絡してから納期を回答する

関係者・取引先

社内外の担当者、連絡方法、約束ごと、これまでの経緯

A社 購買部 鈴木様、連絡はメール、納期の連絡は前日までと約束

システム・アカウント・権限

使うシステム、アカウントの名義、権限、ファイルの保存場所

受注システムは個人アカウント、共有フォルダ「受注」に注文書を保存

進行中の案件

案件ごとの状態、次にやること、期限、関係者

B社の特注品、見積の回答待ち、10月15日までに再連絡

よくある問い合わせ

社内外からよく受ける質問と、答え方、答えの根拠

「納期はいつか」には、在庫表を見て回答し、在庫がなければ確認後に連絡

基本情報から進行中の案件までが全体をまとめる部分で、業務ごとの手順と判断基準と例外は業務の数だけページを作ります。業務一覧の行と業務ごとのページを同じ名前でそろえておくと、後任が一覧から目的のページを探せます。

引き継ぎ書の項目ごとの書き方

項目の名前だけを埋めても、後任が使える引き継ぎ書にはなりません。項目ごとに、書くときに抜けやすい点を挙げます。

業務一覧は頻度と時期まで書く

業務一覧は、引き継ぎ書全体の目次になります。毎日の作業だけを書き出すと、月末の締めや年に一度の更新のような、時期が来るまで表に出ない業務が抜けやすくなります。前任者の記憶に頼らず、メールの送受信、カレンダーの予定、共有フォルダの更新履歴を一緒に見て書き出します。業務の名前は「事務処理」のようにまとめず、「受注入力」「請求書の発行」のように、成果物がわかる単位に分けます。

業務ごとのページは手順と判断を分けて書く

業務ごとのページは、次の図の5つの欄で作ります。

引き継ぎ書の業務ごとのページのひな形
図の要点をテキストで読む

引き継ぎ書のうち、業務ごとに作るページのひな形を、欄、書く内容、記入例で示した表。業務の概要には目的・頻度・成果物の渡し先を書く。手順には開始のきっかけから終わりの確かめ方までを1行に1操作で書く。判断基準と例外には、いつもの判断と例外への対応、上長に確認する条件を書く。使うシステムとファイルには、システム名と権限、ファイルの保存場所を書く。動画と関連資料には、操作動画や手順書、答えの根拠になる資料の保存場所を書く。記入例は受注入力を想定した架空の例。

手順は、1行に1つの操作を書きます。「システムに登録する」ではなく、開く画面の名前、入力する項目、押すボタンの名前まで書くと、後任が画面と見比べながら進められます。最後に、作業が終わったことをどう確かめるかを書きます。「登録後、受注一覧に表示されていることを確認する」のように書いておくと、後任が自分の作業を確かめられます。

判断基準と例外は条件と対応の組で書く

引き継ぎ書でいちばん抜けやすいのが、判断の基準です。前任者は経験で判断しているため、自分が判断していることに気づいていない場合があります。「どうしていたか」を聞き取り、「〇〇のときは△△する」という条件と対応の組で書きます。「臨機応変に対応する」「状況を見て判断する」のような書き方では、後任が同じ判断をできません。

例外は、過去に実際に起きたことから書くと具体的になります。前任者のメールや対応の記録を見返し、いつもと違う処理をした場面を拾います。あわせて、前任者でも判断せずに上長へ確認していた条件を書いておきます。後任が自分で決めてよい範囲と、確認が必要な範囲の境目がわかるためです。例外の扱い方は、Q&A「例外処理はAI×BPOでどう扱うべきですか?」でも整理しています。

関係者・取引先は連絡先と経緯を残す

関係者の欄には、名前と連絡先だけでなく、連絡の方法と、取引先ごとの約束ごとを書きます。「請求書は郵送ではなくメールで送る」「納期が遅れるときは前日までに電話で連絡する」のような取り決めは、前任者しか知らないことが多い情報です。過去にトラブルがあった取引先は、その経緯と、その後に決めた対応も残します。

システム・アカウント・権限にパスワードは書かない

システムの欄には、使うシステムの名前、ログインに使うアカウントの名義、持っている権限、ファイルの保存場所を書きます。アカウントが前任者個人の名義になっている場合は、後任に切り替える手続きも書いておきます。

パスワードは、引き継ぎ書に書きません。総務省の「国民のためのサイバーセキュリティサイト」は、パスワードを同僚などの第三者に教えず秘密にすること、電子メールでやりとりしないことを挙げています。後任には、システムの管理者から新しいアカウントを発行してもらうか、会社が定めた方法で渡します。同じサイトのアカウント管理のページは、不正アクセスに使われる正規のアカウント情報の入手経路として、退職したユーザーのアカウントや、長期間変更されていない共有アカウントの利用を挙げています。前任者のアカウントは引継ぎが終わったら停止し、共有のアカウントはパスワードを変更します。

定期業務カレンダーは締め切りから逆算して書く

定期業務カレンダーには、月次・四半期・年次の業務を、締め切りの日と一緒に書きます。締め切りの日だけでなく、準備を始める日も書いておくと、後任が初めての月でも間に合わせられます。引継ぎの期間中に来ない業務ほど、このカレンダーと業務ごとのページを丁寧に書きます。

進行中の案件は次にやることと期限を書く

進行中の案件は、引き継ぐ時点の状態、次にやること、期限、相手先を1件ずつ書きます。「調整中」のような状態だけでは、後任が何をすればよいかわかりません。「B社に見積を送付済み、回答待ち。10月15日までに回答がなければ電話で確認する」のように、次の行動まで書きます。

よくある問い合わせは答え方と根拠を書く

社内外からよく受ける問い合わせは、質問と答え方を組にして書きます。答えの根拠になる資料(在庫表、価格表、規程など)の保存場所も書いておくと、後任が答えを確かめられます。問い合わせの記録は、後で引き継ぎ書を更新するときの材料にもなります。

操作動画とAIを使って引き継ぎ書を作る

退職が決まった担当者は、通常の業務を続けながら引き継ぎ書を書くことになり、時間が足りなくなりがちです。文章で書きにくい部分は動画で残し、下書きはAIに任せると、前任者が書く量を減らせます。

画面操作は動画で残す

画面の操作が多い業務は、前任者が実際に操作する様子を、説明しながら録画します。1本の動画に複数の業務を入れると、後任が見たい場面を探せないため、業務ごとに短く区切ります。動画には、業務ごとのページと同じ名前を付け、ページから動画の保存場所を示します。動画は操作の流れを伝えるのに向いていますが、判断の基準や取引先との約束ごとは、文章でも引き継ぎ書に残します。

AIに既存の資料から下書きを作らせる

生成AIを使うと、既にある資料から引き継ぎ書の下書きを作れます。たとえば、操作動画の文字起こしから手順の下書きを、過去のメールから取引先ごとの約束ごとの候補を、共有フォルダのファイル名から業務一覧の候補を作らせます。ひな形の項目をそのまま指示に含めると、下書きの形がそろいます。

ただし、AIは資料に書かれていないことを知りません。下書きに対しては、前任者が次の点を確かめます。

  • 手順の順番や画面の名前が、実際の操作と合っているか
  • 資料に出てこない例外や判断の基準が抜けていないか
  • 取引先の名前、日付、金額などの事実が正しいか
  • 前任者の推測が、決まったことのように書かれていないか

社外のAIサービスに社内のメールや取引先の情報を入れてよいかは、会社の利用ルールに従います。ルールがない場合は、先に情報システムの担当者や上長に確認します。社内でのAIの使い方を決める進め方は、社内で生成AIを定着させ、業務に組み込む進め方の記事で解説しています。

引き継ぎ書を後任が実際に使って確かめる

引き継ぎ書ができたら、最終出社日の前に、後任が引き継ぎ書だけを見て業務を処理します。読んだだけでは、書かれていない前提に気づけないためです。作成から確認までの流れは、次の図のとおりです。

引き継ぎ書の作成から確認までの流れ
図の要点をテキストで読む

引き継ぎ書を作り、後任が使えるかを確かめるまでの6つの手順。1は業務一覧の作成で、メール・予定・共有フォルダから業務と時期を洗い出す。2はひな形に沿った記入で、全体をまとめる部分と業務ごとのページを書く。3は動画とAIによる補足で、操作を録画し、既存の資料からAIで下書きを作る。4は前任者の確認で、下書きの事実・例外・判断基準を直す。5は後任の試行で、後任が引き継ぎ書だけで処理し、前任者は横で見る。6は書き足しと更新で、迷った箇所を追記し、更新の担当を決める。最後に、前任者がいなくても後任が読み返せる引き継ぎ書を残す。

後任が処理し、前任者は横で見る

確認では、前任者は口を出さずに横で見ます。後任が迷った箇所、前任者に質問した箇所、引き継ぎ書と違う操作をした箇所が、引き継ぎ書に足りない部分です。すべての業務を試す時間がない場合は、業務一覧の優先度が高い業務と、判断が必要な業務から試します。

迷った箇所をその場で書き足す

後任が迷った箇所は、その日のうちに引き継ぎ書に書き足します。後任が自分の言葉で書き足すと、次に読む人にもわかりやすい表現になりやすくなります。引継ぎの期間中に時期が来ない月次・年次の業務は、過去の成果物や記録を見ながら、後任が手順を読み上げて確かめます。

引継ぎの後も更新を続ける

引き継ぎ書は、渡した時点で終わりではありません。業務のやり方や取引先の担当が変われば、内容は古くなります。後任を引き継ぎ書の更新担当にして、変わったことをその都度書き直すように決めておくと、次の担当替えのときにも使えます。引継ぎで何を渡すべきかは、Q&A「AI×BPO運用のナレッジ移転は、何を渡すべきですか?」でも整理しています。

想定例:後任の試行で見つかった書き漏れ

以下は説明のための架空の例です。受発注を担当する営業事務が退職することになり、前任者が引き継ぎ書を作りました。最終出社日の1週間前に、後任が引き継ぎ書だけを見て受注入力を処理したところ、ある取引先からの注文書に、受注システムに登録されていない旧品番が書かれていました。

引き継ぎ書の手順には、品番を入力する操作しか書かれていませんでした。前任者に聞くと、旧品番の注文は新しい品番に読み替えて入力し、取引先に読み替えたことをメールで伝えていたことがわかりました。後任はその場で、判断基準と例外の欄に「旧品番の注文は、品番の対応表で新しい品番に読み替えて入力し、取引先にメールで伝える」と書き足し、対応表の保存場所も加えました。

引き継ぎ書を作る時間や受け手がいないとき

引き継ぎ書は、前任者に時間があり、受け取る後任が決まっていれば、この記事の項目と手順で社内で作れます。一方で、最終出社日までの時間が足りない場合や、後任がまだ決まっていない場合は、作った引き継ぎ書を確かめる人がいません。

inovieが提供する引継ぎ代行プラスは、社員が辞める・休むときに、会社に代わって業務の引継ぎを受け、後任が決まるまでリモートで業務を回すサービスです。辞める方とのオンラインの引継ぎと、資料・メールの読み込みから、業務ごとの手順書(マニュアル)、画面操作を業務ごとに短く区切った動画マニュアル、マニュアルと動画をもとに質問に答える引継ぎAIの3つを作ります。ほかに、業務一覧、取引先・関係者マップ、進行中の案件、年間カレンダーもまとめます。作ったマニュアルを使って業務を回し、後任が決まった後は、後任の方への引継ぎも行います。公式サイトでは、退職が決まったら最初の2週間でやることのチェックリストと、書き込める業務の棚卸しシートを無料で配布しています。

AIと人で業務を分担する委託の形は、AI×BPOとは?で解説しています。サービスの全体はinovieのサービス一覧でもご覧いただけます。引き継ぎ書の作り方や引継ぎ先にお困りの場合は、お問い合わせからご相談ください。

出典確認日:2026-10-06

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