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AI導入・開発

マルチエージェントとは?構成の型と単一エージェントとの使い分け

マルチエージェントとは?構成の型と単一エージェントとの使い分け

マルチエージェントとは、複数のAIエージェントがそれぞれの役割を受け持ち、作業を分担しながら協調して1つの目的を達成する構成です。1つのエージェントでは扱いきれない量の情報やツールを、役割ごとに分けて持たせます。一方で、エージェントを増やすほど利用料と処理時間が増え、誤りも後ろの工程へ伝わりやすくなります。そのため各社の公式ドキュメントは、単一のエージェントで足りるかを先に確かめるよう勧めています。この記事では、Anthropic、OpenAI、Google、Microsoftの公式資料をもとに、マルチエージェントの構成の型、単一エージェントとの使い分け、2026年10月時点の主な作り方、エージェント同士の連携の標準であるA2A、評価と運用の注意点を整理します。

マルチエージェントとは:複数のAIエージェントが役割を分けて協調する構成

単一エージェントとの違い

AIエージェントは、目標に向けてAIが自分で手順を決め、検索やシステム操作などのツールを使って作業を進める仕組みです。基本の考え方はAIエージェントとは?仕組みとできること、作り方と導入の進め方で解説しています。

単一エージェントの構成では、1つのエージェントがすべての指示とツールを持ち、作業の最初から最後までを受け持ちます。マルチエージェントの構成(マルチエージェントシステム)は、調べる担当、書く担当、確かめる担当のように指示とツールを分けた複数のエージェントが、作業を受け渡したり結果を持ち寄ったりする構成です。

MicrosoftのAzure Architecture Centerの解説「AI agent orchestration patterns」は、マルチエージェントを、専門化した複数のエージェントが連携して問題を解く構成と説明しています。作業の割り振り、文脈の共有、結果のとりまとめは、指揮役のエージェントか、エージェント同士の取り決めが管理します。

役割を分けると何が変わるか

Anthropicは2026年1月の記事「Building multi-agent systems: When and how to use them」で、複数のエージェントが役立つ場面として次の3つを挙げています。

  • 文脈を分ける:ある作業にしか関係しない情報を、別の作業のエージェントに持ち込まない。
  • 並列に進める:互いに独立した調べものを同時に進める。
  • 専門化する:エージェントごとに、必要なツールと指示だけを持たせる。

AnthropicのClaude Agent SDKのドキュメントも、サブエージェント(メインのエージェントが呼び出す別のエージェント)の利点として、文脈の分離、並列の実行、専門の指示に加えて、使えるツールを絞れることを挙げています。たとえば文書を確認するだけのエージェントに読み取りのツールだけを渡せば、そのエージェントがファイルを書き換えることはありません。

マルチエージェントの構成の型

構成の型は、提供元によって呼び名が少しずつ違います。エージェントの間で作業をどう受け渡すかで整理すると、おおむね次の5つに分けられます。プロンプトチェーンやルーティングなど、AIエージェントの設計パターン全般はAIエージェントの設計パターンとは?6つの型と業務に合わせた選び方で解説しているため、ここでは複数のエージェントの組み合わせ方に絞ります。

マルチエージェントの構成の型
図の要点をテキストで読む

マルチエージェントの5つの構成の型を、受け渡し方、向く作業、注意する点で比べた表。指揮役と担当役は、指揮役が作業を分けて担当に割り振り結果をまとめる構成で、調べ方が入力ごとに変わる調査に向き、費用と処理時間が増えやすい。順番に渡す構成は、前のエージェントの出力を次が受け取り、下書き、見直し、仕上げのような段階のある作業に向くが、前の工程の誤りが後ろへ伝わる。並列の構成は同じ入力を同時に処理して結果を持ち寄り、複数の観点での分析に向くが、結果が食い違ったときの決め方が必要になる。ハンドオフは担当が判断して別の担当に引き継ぎ、途中で適した担当が分かる問い合わせに向くが、引き継ぎがくり返されるおそれがある。議論と相互確認は同じ会話で意見を出し合い作成役と確認役が確かめ合う構成で、基準のはっきりした確認に向き、くり返しの上限を決めておく必要がある。

指揮役と担当役(オーケストレーター・ワーカー)

指揮役のエージェントが作業を分解して担当のエージェントに割り振り、結果をまとめる構成です。Anthropicは2025年6月の記事「How we built our multi-agent research system」で、自社の調査機能をこの構成で作ったと説明しています。指揮役のエージェントが調べ方の方針を立て、異なる観点を調べる担当のエージェントを同時に動かします。

OpenAI Agents SDKのドキュメントは、指揮役が担当のエージェントをツールとして呼び出す方式を「agents as tools」と呼び、範囲の決まった作業を担当に手伝わせる場合に向くとしています。GoogleのAgent Development Kit(ADK)にも、1つのエージェントが指揮役になり、指定したサブエージェントを使って作業を進める「collaborative workflows」があります。Microsoftの解説にある「magentic orchestration」も、指揮役のエージェントが作業の一覧を作りながら担当を呼び出し、計画を直していく構成です。

順番に渡す(シーケンシャル)

決めた順番でエージェントをつなぎ、前のエージェントの出力を次のエージェントが受け取る構成です。Microsoftの解説は、下書き、見直し、仕上げのように段階を追って質を上げる作業や、工程の間にはっきりした依存関係がある作業に向くとしています。次にどのエージェントを呼ぶかは事前に決まっていて、エージェントには選ばせません。注意点としては、前の工程の誤りがそのまま後ろへ伝わることが挙げられています。

並列に動かして持ち寄る(コンカレント)

同じ入力に対して複数のエージェントを同時に動かし、それぞれの結果をまとめる構成です。Microsoftの解説は、1つの課題を複数の観点から独立に分析する場合に向くとしています。結果が食い違ったときのまとめ方は、多数決、重みづけ、AIによる要約などから作業に合うものを選びます。ADKでは、順番、くり返しと並ぶテンプレートの1つが並列のワークフローです。

担当を切り替える(ハンドオフ)

作業を受けたエージェントが、自分で処理するか、より適した担当に引き継ぐかを判断する構成です。OpenAI Agents SDKでは「handoffs」と呼ばれ、受付役のエージェントが担当に振り分けると、担当のエージェントがその後の対応を引き継ぎます。Microsoftの解説は、どの担当が適しているかが処理を進めるうちに分かる作業に向くとし、引き継ぎがくり返されて終わらなくなる点に注意を求めています。

議論と相互確認(グループチャット、作成と確認)

複数のエージェントが同じ会話に意見を書き込み、議論や確認を重ねる構成です。Microsoftの解説では「group chat orchestration」と呼ばれ、作成役の結果を確認役が基準に照らして合否を決める「maker-checker」のくり返しも含みます。確認役には明確な合格基準を持たせ、くり返しの上限と、上限に達したときの扱い(人の確認に回すなど)を決めておくよう求めています。

Anthropicの2026年1月の記事も、確認だけを受け持つエージェントを置く形は、分野を問わずうまく機能しやすいとしています。ただし、確認役が1〜2件の試験だけで合格と判断してしまう失敗が最も大きいとして、具体的な成功の基準を渡すよう注意しています。

単一エージェントとマルチエージェントの使い分け

エージェントを増やすと増えるもの

Anthropicの2026年1月の記事によると、同社の試験では、同じ作業でマルチエージェントの構成は単一エージェントの3〜10倍のトークンを使うのが一般的でした。並列に動かしても計算の総量が増えるため、全体ではマルチエージェントのほうが時間がかかることが多いとも書いています。2025年6月の調査機能の記事でも、マルチエージェントの構成はチャットの約15倍のトークンを使うと公表しています。

Microsoftの解説は、構成の複雑さを「1回のモデル呼び出し」「ツールを使う単一のエージェント」「マルチエージェントの連携」の3段階に分けています。段階が上がるごとに、連携のための処理、待ち時間、費用が増えます。そのうえで、要件を確実に満たす中で最も低い段階を使うよう勧め、業務での利用ではツールを使う単一のエージェントが標準的な選択になることが多いとしています。

誤りの伝わり方も変わります。Microsoftの解説は、品質の低い出力や形式の崩れた出力が後ろのエージェントへ次々に伝わるおそれがあるとして、次のエージェントに渡す前に出力を確かめるよう求めています。Anthropicは、作業の種類ごとにエージェントを分けると、引き継ぎのたびに情報が少しずつ失われる「伝言ゲーム」になると指摘しています。

マルチエージェントが向く条件

Microsoftの解説は、指示が複雑すぎる、ツールが多すぎる、セキュリティの要件があるといった理由で、単一のエージェントでは確実に処理できない場合に、追加の複雑さに見合うとしています。部門をまたぐ問題、エージェントごとに別のセキュリティの境界が必要な場面、並列の専門化が役立つ作業が挙げられています。Anthropicも、1つのエージェントが15〜20個以上のツールを持つと、選択肢を理解するだけで多くの文脈と注意を使うと説明しています。

反対に、Anthropicの2025年6月の記事は、すべてのエージェントが同じ文脈を共有する必要がある分野や、エージェント間の依存関係が多い分野は、現時点ではマルチエージェントに向かないとしています。多くのプログラム開発の作業は、調査に比べて本当に並列にできる部分が少ないことも挙げています。

分け方は作業の種類ではなく必要な文脈で決める

Anthropicの2026年1月の記事は、エージェントを、計画、実装、テストのような作業の種類で分けるのではなく、その作業に必要な文脈のまとまりで分けるよう勧めています。互いに独立して調べられる調査の経路ごとに分ければ、エージェント間の受け渡しが少なく済むためです。

単一エージェントとマルチエージェントの使い分け
図の要点をテキストで読む

単一エージェントとマルチエージェントの使い分けの整理。単一のエージェントで続ける場合は、全員が同じ文脈を使う作業、工程の依存関係が多い作業、ツールと指示が1つにまとまる作業が当てはまる。マルチエージェントを検討する場合は、ツールが多すぎて選び方が乱れるとき、独立した調べものを並列に進めたいとき、エージェントごとに権限の境界を分けたいときが当てはまる。エージェントを増やすと、トークンと費用、全体の処理時間、誤りが後ろへ伝わる経路、記録と評価の手間が増える。分けるときは作業の種類ではなく、必要な文脈のまとまりで分ける。

単一エージェントとの比べ方は、Q&A「マルチエージェント構成とシングルエージェント、どちらがよいですか?」でも整理しています。

マルチエージェントの作り方:主なSDK・フレームワーク・ツール

以下の製品名と機能は、2026年10月7日に各提供元の公式ドキュメントで確認したものです。この分野は名称や提供状況がよく変わるため、採用するときは改めて最新の情報を確かめます。

開発用のSDK

  • OpenAI Agents SDK:エージェント、別のエージェントへの作業の委任(handoffsとagents as tools)、入出力を確かめるガードレールを基本の部品とし、処理の記録(トレース)や人の承認の機能を備えます。ドキュメントは、AIに進め方を決めさせる方法と、コードで順番や並列を決める方法の両方を説明しています。
  • Claude Agent SDK:Anthropicが提供し、メインのエージェントからサブエージェントを呼び出せます。サブエージェントごとに使えるツールを絞れるほか、入れ子の深さ、同時に動く数、1回の処理で使う費用に上限を設けられます。
  • Agent Development Kit(ADK):Googleが公開するオープンソースのフレームワークです。順番、くり返し、並列のテンプレートに加え、2.0以降ではグラフ型のワークフローと、指揮役のエージェントがサブエージェントを使う構成が用意されています。
  • Microsoft Agent Framework:Semantic KernelとAutoGenの後継として、同じチームが開発するオープンソースのSDKです。順番、並列、グループチャット、ハンドオフ、magenticの5つの連携の型が組み込まれています。

フレームワーク

LangChainのドキュメントは、LangGraphを、長時間動いて状態を保つエージェントを作るための低レベルのオーケストレーションのフレームワークと説明しています。決まった処理とAIの判断を1つのグラフに組み合わせられ、途中で止まっても続きから再開できる永続化や、人が途中の状態を確認して直す機能を備えます。同じドキュメントは、マルチエージェントの型としてサブエージェント、ハンドオフ、スキル、ルーター、独自のワークフローを挙げたうえで、複雑な作業のすべてにこの方式が必要なわけではないと注意しています。LangGraphの仕組みは、LangGraphとは?仕組みと使い方で解説しています。

ノーコード・ローコードのツール

Difyでは、ワークフローにAgentノードを置き、AIがツールを選んで使う処理を組み込めます。1つのワークフローに複数のAgentノードを置き、出力を宣言して後ろのノードで参照すれば、役割の違うエージェントをつなげられます。処理が終わらなくなるのを防ぐくり返しの上限(Max Iterations)も設定できます。2026年10月時点では、新しい形のAgentノードがベータとして提供されています。Difyの全体像はDifyとは?できること、使い方とクラウド版・セルフホスト版の違いで解説しています。

SDKやフレームワークは、エージェントごとの権限や処理の記録を細かく決められる反面、設計と保守を担う開発者が必要です。ノーコード・ローコードのツールは小さく試すのに向きますが、細かな制御はツールが用意した機能の範囲に限られます。

エージェント同士の連携の標準:A2AとMCP

A2Aとは

A2A(Agent2Agent)は、異なるフレームワークや提供元で作られたAIエージェント同士が、互いを見つけ、作業を依頼し、結果を受け取るための公開の標準です。Googleが開発し、Linux Foundationに寄贈されました。仕様の安定版であるv1.0.0は2026年3月12日に公開され、2026年10月7日時点の最新はv1.0.1(2026年5月28日公開)です。

2026年8月には、A2AがAgentic AI Foundation(AAIF)のプロジェクトに加わることが発表されました。AAIFは、Linux Foundationが2025年12月に設立した団体で、MCPやAGENTS.mdなども扱っています。

A2Aでは、各エージェントが、名前、できること、接続先、認証の方法をまとめた「Agent Card」を公開します。依頼した作業は状態を持つ「Task」として管理され、成果物は「Artifact」として返されます。依頼する側から見ると、相手のエージェントの内部の仕組み、記憶、ツールは見えない作りです。

MCPとの違い

MCP(Model Context Protocol)は、1つのエージェントがデータベースやAPIなどのツールを使うための標準です。A2Aの公式ドキュメントは、MCPでそれぞれのエージェントに必要なツールを持たせ、A2Aでエージェント同士を連携させる、という組み合わせ方を説明しています。社内のシステムにつなぐ部分はMCP、別の提供元や別のフレームワークで作られたエージェントと作業をやり取りする部分はA2A、と分けると整理しやすくなります。ADKの公式サイトも、A2Aでエージェントを公開する方法と呼び出す方法を案内しています。MCPの仕組みと権限の決め方はMCPとは?MCPサーバーの仕組みと社内システム連携の権限設計で解説しています。

マルチエージェントの評価と運用の注意

処理の記録を残して評価する

Microsoftの解説は、エージェントのすべての操作と引き継ぎを記録し、エージェントごとの性能と資源の使用量を測るよう勧めています。AIの出力は毎回同じとは限らないため、エージェントをつないだ試験では完全一致で比べず、採点の基準やAIによる評価を使うとしています。Anthropicの調査機能の記事も、AIによる評価に加えて、自動の評価が見落とす問題を人の評価で見つけたと書いており、本番の処理をすべて記録(トレース)していると説明しています。

エージェントごとに権限を絞る

Microsoftの解説は、エージェントと指揮役に最小権限の原則を適用するよう求めています。エージェント間の通信の認証、監査のための記録、利用者の権限に応じた情報の出し分けも、すべてのエージェントで行う対象です。不適切な内容は途中のエージェントから入り込んだり広がったりするおそれがあるため、利用者の入力、ツールの呼び出し、ツールの応答、最終的な出力のそれぞれで確かめるよう勧めています。

上限と止め方を決める

エージェントが別のエージェントを呼び出す構成では、1回の依頼が想定より大きな処理に広がることがあります。Claude Agent SDKには、サブエージェントの入れ子の深さ、同時に動く数、費用に上限を設ける機能があります。Microsoftの解説も、タイムアウトと再試行、一部のエージェントが失敗したときの代わりの動き、中断から再開するためのチェックポイントを挙げています。

人の承認を置く

外部への送信、データの更新、支払いのように取り消しにくい操作の前には、人の承認を置きます。Microsoftの解説は、承認をエージェントの出力全体ではなく特定のツールの実行に絞れば、リスクの低い操作は自動で進められるとしています。承認を置く場所の決め方は、AIエージェントの設計パターンとは?6つの型と業務に合わせた選び方で解説しています。

想定例:商談前の調査をマルチエージェントで行う場合

以下は説明のための架空の例です。法人営業の担当者が商談の前に取引先の情報をまとめる作業を、AIエージェントで支援するとします。

最初は単一のエージェントに、Web検索と顧客管理システムの読み取りを持たせて試します。調べる観点が多く、1つのエージェントの文脈に収まりきらないと分かった段階で、構成を変えます。指揮役のエージェントが、公開情報を調べる担当、社内の取引履歴を調べる担当を同時に動かし、最後に確認役がまとめた内容と出典の対応を確かめます。

担当のエージェントには読み取りの権限だけを渡し、顧客管理システムへの書き込みやメールの送信はさせません。処理の記録はエージェントごとに残し、1件あたりのトークン数と処理時間を、単一エージェントで試したときと比べます。まとめた資料は担当者が確認してから商談に使います。

マルチエージェントの導入を相談する場合

マルチエージェントの構成を検討するときは、単一のエージェントで足りるかの確認、エージェントの分け方、エージェントごとの権限、処理の記録と評価、人の承認を置く場所を、まとめて決める必要があります。

inovieでは、対象業務の整理からAIエージェントの設計、試作での検証、既存システムへの組み込みまでを支援しています。詳しくはAIエージェント導入・改善支援をご覧ください。単一のエージェントで始めるか、複数のエージェントに分けるかのご相談は、お問い合わせから受け付けています。

出典確認日:2026-10-07

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